生命を形づくるタンパク質の謎に迫る。それは、未来の"いのち"につながっている。 |
高齢化が進むにつれアルツハイマー病やパーキンソン病など脳神経変性病が増加し、その病気に伴う認知能力や身体運動機能の低下は、医療や介護・福祉分野など多方面に大きな影響を及ぼしている。河田康志教授は、このような病気の発生原因やメカニズムをタンパク質・酵素の構造から読み解こうとしている。 専攻は化学・生物応用工学。「生物を形づくる細胞は、化学の素反応の複雑な集合体です。だから化学と生物、あるいは物理や数学なども生命の観点からするとすべて連なり合っている」という。特にタンパク質や酵素(酵素もタンパク質の一種)は、人体では水の次に多い細胞の構成物で、幾種ものアミノ酸がさまざまに結びついて(約100~1,000個が結合)形づくられている。「アミノ酸の結合のあり方が少し変わっただけで、天文学的数字になるほど多様なタンパク質が形成される」と教授。私たちの体の中では、日々、無数のタンパク質が合成され、それが"いのち"を止むことなく育んでいるのだ。
ところで脳神経変性病の発症原因には、特殊なタンパク質(Aβペプチドやαシヌクレイン)の形の変化が深く関連しているという。それが脳細胞の内外で溶解(分解)しにくいアミロイド線維と呼ばれる凝集体をつくり、その過程で毒性が生じると見られている。 「細胞の核にあるDNAはタンパク質の形成を第一義的にはコード(伝達指令)していますが、ではタンパク質の形成過程がDNAに完全に支配されているかというと、実はそうではないことがわかってきました」。そこで教授たちが注目している一つに生体超分子「分子シャペロン」というタンパク質分子とその働きがある。 タンパク質は一定の「かたち」を保ってこそ、正常に機能するけれども、さまざまな内的・外的要因で本来あるべき正常な「かたち」が壊れやすくなる。しかし細胞内には、その壊れを修復・再生する働きも備わっており、この役割を担っている一つが分子シャペロンだと考えられる。その機能の解析から神経変性病などの予防・治療につながる手がかりが見つかるものと期待されている。 工学とは言いながら、教授の研究は医学系研究科にも属し、広大な研究領域にまたがっており驚きと未知なる発見が潜んでいる。
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