私は工学研究科(応用化学系)の大学院を8年半前に修了しました。その後、印刷会社に就職し、現在、包装事業部で仕事をしています。最近まで、電子レンジで温める食品のパッケージ(包装材料、略して「包材」と呼んでいます)の開発をしていました。
私が関わったレトルトカレーの包材の開発の例を紹介します。得意先から包材の依頼がありました。当方では、提示された仕様とコストに合うように、試作品を作り、相手先に提案します。仕様は、他社の特許を回避した仕様であることが前提となります。相手先から改善の要求が出た場合は改良品を作ります。要求を満たす仕様を確立できて、ようやく合格品となります。社内審議でOKが出れば、ようやく製品になります。このケースでは、提案から製品化まで約半年ほどかかりました。また、社内の多くの部署が協力しました。
こうした経験から仕事でもとめられる能力を、「提案力」、「対応力」、そして「各部署との連携力」という3つに分けて説明します。第一に「提案力」は大学の研究室で身につけました。アイディアを基に、実験をして、得た結果を考察していくうちに、次のアイディアが生まれるという体験が役立ったのだと思います。第二に「対応力」とは基礎知識のことです。相手先からの改善要求への解決策を考え出すには大学で学んだ知識がベースになります。例えば、私の仕事では、無機化学、有機化学、物理学の基礎知識が解決策を編み出すエンジンになりました。第三に「各部署との連携力」は、大学でのサークル活動、研究室での先生や先輩、後輩との議論、アルバイトなどを通して養成されました。年齢の幅の広い、さまざまな背景や意見をもった人との出会いによって、学ぶことができたのだと思います。こうした能力を引き出し、伸ばす場を与えてくれていたのが大学キャンパスだったことを今になって実感しています。
工学部の『工』という字の一つの解釈を大学で教わりました。上の横棒が『社会』、下の横棒が『学問』を表していて、それを結びつけるのが『工』学を学んだ者の役割だというのです。お客さんに喜んでもらえるモノ作りを工夫し続ける人材でありたいと思っています。
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