生物模倣(バイオミメティクス)という研究分野があります。生物の身体や機能、行動などから着想を得て、新しい技術の開発やものづくりに活かそうとする研究分野です。そしてロボット工学の分野でもネコ型ロボット、イルカ型ロボット、チョウ型ロボットなど生物を模倣した多くのロボットがこれまでに開発されているのですが、今回はそれらのロボットの中からヘビ型ロボットを取り上げます。ヘビは単純な紐状の形をしており、自分の身体を屈曲させて蛇行運動することで移動します。生物のヘビを模倣して高機能なロボットが世界中で開発されていますが、多数のモータやコンピュータ、プログラムが必要になり個人では製作が大変難しい場合があります。
そこで今回ご紹介するのが、モータ1個のみを用いてヘビのように身体を蛇行運動させながら進むヘビ型ロボットです。このロボットはコンピュータやセンサなどの電子部品やプログラムも必要としないので、組み立ててスイッチを押すだけで動き出します。
ヘビの身体は身体に沿った方向には滑りやすく身体と垂直な方向には滑りにくい性質になっています。そこで自身の身体を蛇行させた時に発生する地面との摩擦による反力を利用し、身体方向に進みます。ちょうどこれはローラースケートやアイススケートと同じ推進原理になっています。ただヘビは種にもよりますが関節が200以上もある生物です。ヘビは筋肉により関節を駆動するのですが、ロボットではモータにより関節を駆動する場合がほとんどです。したがって、ヘビを模倣してロボットを作ろうと単純に考えると200個以上ものモータが必要になってしまいます。この問題を解決するために今回はたった1つのモータを使ってヘビの運動を再現できる装置を使います。この装置を使うと、ヘビの蛇行によって生成される進行波というヘビの推進に深く関係している波を生成できます。なお進行波とは時間経過とともに空間内を移動していく波を意味しています。コイルばねの中心軸方向への投影が円であり側面方向への投影が正弦波であることに着目し、コイルばね、つまりらせんを回転させて進行波を作り出すことのできる装置です。今回のヘビ型ロボットは機械と生物の両者から学んだ技術が核になっています。
これらの寸法を参考にCADでモデルを作成し、3Dプリンタを使えば必要な部品が作成できます。材料はPLAフィラメント等で十分ですが、らせん型ガイドの表面を滑らかにすると動作が良好になります。
掲載大学 学部 |
埼玉大学 工学部 | 埼玉大学 工学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |