土木工学は、人間の暮らしを支える社会基盤と自然との間に立って、安心して快適に、効率よく持続的に活動できるようにするための技術体系です。
埼玉大学の地盤防災グループでは、斜面災害の早期警報に取り組んでいます。斜面が大雨で崩れるとき、突然崩れるのではなく、数日あるいは数時間前から微少な変動が続き、だんだん加速して崩壊します。この動きを監視すれば、警報を出して避難できるだろうというのが研究の動機です(図1)。土砂災害に対しては、市町村が、主に降雨量を判断基準にして警報を出す制度になっています。しかし、気象庁から届く雨の情報は、現状では5km×5kmの割と広い範囲ごとの値で、その中に多数ある斜面のどこが崩れるかは分かりません。特に災害を避けたい場所は、降雨に加えて斜面そのものの動きを監視するのがよいと思います。
個々の斜面に監視装置をつけるとなると、なるべく簡単な方法を使って、1箇所あたりのコストを下げる必要があります。私たちが試しているのは、斜面に1m位の棒を差し込んで、斜面の動きにつれて棒が傾く角度を測る方法です(図2)。棒が傾く速さは、1時間あたり0.001度くらいから始まり、だんだん加速していきます(図3)。特に初期は人間の目では絶対に気づかないほど遅いですが、傾斜センサーで連続して監視していれば検出できます。
斜面の監視による早期警報には、難しさもあります。斜面がどんな動きをしたら、避難しなければならないか?斜面のどこを監視すればよいか?雨量が基準を超えたから、必ず崩れるというものでもありません。大雨が降って、確かに動き出したのだけど、途中で動きが止まって結局崩れなかった、ということもよくあります。これまでに、企業や海外の研究者の協力も得ながら国内外100ヶ所近くの斜面に出かけて監視を試みました。その中で何らかの変動があった斜面は10箇所程度で、ほかは何事も起こりませんでした。どんな地質や地形の斜面であれば、崩れる前にどんな動き見せるのか、多くの事例を集めて法則を探していくことが必要です。
土砂災害は古くからある社会問題で、時間のかかる地道な研究課題ですが、国内外の多くの研究仲間と協力して、進めていきたいと思います。
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