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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

超伝導体の空中浮遊

2020年4月3日
富山大学 学術研究部 都市デザイン学系 並木孝洋

 超伝導体とは何でしょうか? 超伝導体とは一般に「温度を十分に冷やすと電気抵抗がゼロになる物質」です。この現象の凄いところは、エネルギーのロス無しに電流を流すことが出来るという所です。そのため、もし超伝導体で送電線を作ることが出来れば数%もある送電ロスをゼロにすることが出来、非常にエコになります。また、医療分野ではエネルギーロス無しに電流を流せるという性質を使って超伝導電磁石を作り、NMR装置に組み込むことで医学の発展に使用されています。

 超伝導状態を特徴付ける物として、この電気抵抗がゼロとなる現象ともう一つ「完全反磁性」(その発見者の名前を取ってマイスナー効果とも呼ばれています)という性質があります。完全反磁性というのは、超伝導体に外部からかけた磁場が(それがあまり強くなければ)完全に遮蔽され、超伝導体内部での磁束密度がゼロとなる現象です。言い換えると、超伝導体は外部磁場をちょうど打ち消すだけの磁化を持ちます。完全反磁性とは永久磁石の同じ極(N極とN極もしくはS極とS極)を近づけたときの様に反発する現象ですが、超伝導体の場合永久磁石とは異なり、超伝導体にN極を近づけるとN極に、S極を近づけるとS極と言う様に必ず近づいた極と同じ極が発生し反発します。

 そのために超伝導状態となった超伝導体を永久磁石に乗せると、写真の様に、反発して空中に浮きます。普通の永久磁石で同じことをやろうとするとすぐに磁石がひっくり返ってN極とS極で引きつけ合ってくっついてしまうため、これが完全反磁性の特徴と言えます。

 この完全反磁性ですが、磁石とは相性が悪く、磁石に近づけすぎるなどして磁場が強くなると超伝導状態が壊れてしまいます。その壊れ方には第一種超伝導体と第二種超伝導体の2種類存在します。第一種超伝導体はある程度磁場が強くなると一気に壊れるのに対して第二種超伝導体は少し磁場が強くなると磁束の一部が超伝導体中に入り込み、常伝導状態と超伝導状態が入り交じった混合状態が発生します。混合状態では超伝導体に入り込んだ磁束がピン留め効果と呼ばれる現象により特定の位置に固定されます。そのため、磁場に対してある位置でバランスを取る様になり、その位置から更に磁石と近づくと反発し逆に遠ざかると引力が働きます。そのため、磁石をひっくり返したり横にしたりしても超伝導体は落っこちずに空中に浮くことが出来る様になります。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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