私たちの日常生活には「からだ」の情報を使う場面が多くあります。例えば、病院では脳、心臓、筋肉などの身体の組織の働きを調整する生体電気信号の情報を計測して、病気の診断や治療に活用しています。指紋や顔などの身体の形の情報は、ドアやスマートフォンの鍵のように人間とモノをつなぐインターフェースとして活用されることもあります。ここでは、「からだ」の情報を取り出す体験として、筋肉の収縮によって生じる身体の変形を音として聴く実験を紹介します。
2-A
ブレッドボードに抵抗を差し込み、それぞれの抵抗の足にワニ口クリップを2つずつ接続します。黄色のワニ口クリップは、スピーカーと圧力センサと接続するためのものです。黒色のワニ口クリップは、電池(-)とスピーカーと接続するためのものです。
2-B
抵抗に接続したワニ口クリップをオーディオケーブルのステレオミニプラグの一端に接続します。黒色のワニ口クリップはステレオミニプラグの根元の金属部分に接続します。黄色のワニ口クリップはステレオミニプラグの先端の金属部分に接続します。オーディオケーブルの他端のステレオミニプラグはスピーカーに接続します。このように接続することで10kΩの抵抗にかかる電圧変化を音の大きさや高さとして取り出すことができます。
2-C
圧力センサの2つの端子のうちの1つを電池(+)に接続し、もう1つを抵抗に接続します。接続にはフッククリップを使います。計測実験の準備が整うまでは、圧力センサに接続していない方のフッククリップを電池(+)に接続しません。
圧力センサを用いて筋肉の働きを音に変換できる原理を考えてみましょう。
今回の実験で使用した圧力センサは、高分子厚膜フィルム(Polymer Thick Film; PTF)デバイスの一種です。センサに力を加えると内部の膜が変形します。膜には導電性の膜層があり、その膜層の電気抵抗が膜の変形によって変化します。使用した圧力センサは、圧力が大きくなると、電気抵抗が減少するという特性を持っています。つまり、電気回路においては、圧力が加えられると抵抗値が変化する可変抵抗として働きます。
筋肉は収縮すると短く太くなり、それに伴って腕も部分的に太くなります。手を握って力を入れた時にマジックテープバンドが少しキツイと感じられ、それは腕が太くなっていたことで生じた感覚です。自分がバンドを少しキツイと感じているときには、圧力センサにも力が加わっています。今回の実験で使用した圧力センサには圧力が大きくなると抵抗値が減少する特性がありましたから、腕が太くなればなるほど圧力センサに大きな力が加わって圧力センサの電気抵抗は小さくなります。
ここでの分圧とは、1つの電圧を2つの電圧に分けることを言います。図のように、電源電圧Vcc[V]を直列に接続した2つの抵抗(R1, R2)で分圧したときのVout[V]の電圧について考えます。抵抗R1からR2の方向に電流I[A]が流れているとすると、抵抗R1, R2のそれぞれにかかる電圧はオームの法則より以下のようになります。
抵抗R1にかかる電圧 Vcc-Vout = I×R1
抵抗R2にかかる電圧 Vout = I × R2
この2つの式を連立方程式として電流Iを消去すると以下の関係式が得られます。
Vout = Vcc × { R2 / (R1+R2) }
今回の実験で使用した回路は、上述した分圧回路の抵抗R1を圧力センサに置き換えたものです。圧力センサは加えられた圧力に依存して抵抗値が変化するので、それに伴って電圧Voutの値も変化します。その電圧が音としてスピーカーから出力され、電圧の変化が音の大きさや高さの情報として現れます。
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