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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

可視光通信を体験しよう!

2019年6月21日
信州大学 工学部

はじめに

 みなさんは「発光ダイオード(LED)」と聞いて何を思い浮かべますか?きっと、懐中電灯やLED照明、車のヘッドライトなどの照明器具を思い浮かべると思います。LEDには省エネや長寿命など優れた特徴があり、信号機やスマートフォンのバックライトなど幅広い用途で使用されるようになってきました。LEDのように目に見える光のことを「可視光」と呼んでいます。

 今回は、Bluetoothヘッドホンのように電波を使うのではなく、「LED(可視光)を使って音楽を伝える装置(可視光通信装置)」を作ってみましょう。

可視光送信機(左)と可視光受信機(右)可視光送信機(左)と可視光受信機(右)

用意するもの

※パーツの名称をクリックすると購入先の一例が表示されます。

  1. ブレッドボード: 2個
  2. 抵抗やコンデンサ、導線(ジャンパー線)などの電子部品を穴(ソケット)に挿し込むだけで、電子回路の試作・実験ができるボードです。配線にはんだ付けが要らないので何度でもやり直しができたり、配線を挿し替えるだけで別の回路を簡単に作れたりします。各ソケットが内部でつながっている様子を図中の点線の枠で表しています。

  3. 発光ダイオード(LED): 1個

    電流を流すと光る素子で、電流の大きさによって明るさが変わります。足の長い方を『アノード』、短い方を『カソード』と呼びます。配線の際はアノードとカソードの向き(極性)に気をつけましょう。

  4. フォトICダイオードS7183: 1個

    光を当てると電流が発生する素子で、明るさによって電流の大きさが変わります。受光部(突起部分)を表にして見たときに左側が『カソード』、右側が『アノード』になります。配線の際はアノードとカソードの向き(極性)に気をつけましょう。LEDとは逆になります。

  5. 電解コンデンサ(10μF): 2個
  6. 電気(電荷)を蓄えたり放出したりする素子で、直流を通さない(絶縁する)素子でもあります。足の長い方が『プラス』、短い方が『マイナス』です。配線の際はプラスとマイナスの向き(極性)に気をつけましょう。

  7. 固定抵抗: 100kΩ 2本、4.7kΩ 1本、220Ω 1本

    電流の大きさを調整する素子です。抵抗の値は4本の帯の色で見分けます。極性(向き)はありません。

    • 100kΩ: 茶、 黒、 黄、 金
    • 4.7kΩ: 黃、 紫、 赤、 金
    • 220Ω: 赤、 赤、 茶、 金
  8. トランジスタ 2SC1815: 1個

    電気(電流)の流れをコントロールする部品です。小さな電流を大きくしたり(増幅)、電流をオン・オフしたり(スイッチング)できます。足が3本あり、型番がプリントされている方を表にして見たときに、左から『エミッタ』『コレクタ』『ベース』と呼びます。配線の際はトランジスタの向きに気をつけましょう。

  9. 3.5mmステレオミニジャックDIP化キット: 2個

    音楽を入出力するためのジャック(3.5mmステレオミニプラグケーブルと回路を接続する部品)です。後述の説明にしたがってはんだ付けをしてから使用します。

  10. 3.5mmステレオミニプラグケーブル: 1本

    スマートフォンや音楽プレーヤーなど音楽を再生する機器と可視光送信機を接続するケーブルです。

  11. 電池ボックス 単3形×4本 Bスナップ: 2個
  12. ジャンパーワイヤ付 バッテリースナップ: 2個
  13. 単3形乾電池: 8本

    単3形乾電池(計6V)を入れて使用します。ブレッドボードに接続しやすいように、バッテリースナップにジャンパーワイヤが付いています。送信機と受信機の両方に必要です。

  14. ジャンプワイヤパック: 1セット

    セットには10種類100本のジャンパー線が入っていますが、今回は、黄色8本、橙色2本、青色2本、灰色2本のジャンパー線を使います。0Ωの抵抗やビニール線など導線の役割をするものであれば代用できます。

  15. 音楽プレーヤーやスマートフォンなどの音楽再生機器

    3.5mmイヤホンジャック付きの機器であれば何でも構いません。

  16. パソコン用スピーカー(またはイヤホン)

    3.5mmステレオミニケーブルでパソコンに接続するタイプのスピーカーであれば何でも構いません。スピーカーの代わりにイヤホン(3極プラグ)でも代用できますが、イヤホンマイク(4極プラグ)では音楽が聞こえない場合があります。

    スピーカーの例:
    LOGICOOL ステレオスピーカー Z120BW
  17. 必要工具
    • はんだごて
    • ニッパー
    • ラジオペンチ

作ってみよう

ステレオミニジャックの作製(はんだ付け

 音楽プレーヤーやスマートフォンなどの音楽再生機器を接続するジャック(送信機側)と、受信した音楽を聴くためにスピーカーやイヤホンを接続するジャック(受信機側)の計2セットを作製(はんだ付け)します。

  1. パーツの準備

    購入した3.5mmステレオミニジャックDIP化キットは左の写真のように3点の部品が同梱されています。ピンヘッダ(一番左の部品)を右の写真のように切り離します。1つのピンは予備になります。

    キットの内容
    ピンヘッダの切り離し方
  2. ピンヘッダの準備

    ブレッドボードを利用してはんだ付けをします。まず、ピンヘッダを写真の場所に挿します。

  3. 基板の準備&はんだ付け
    ブレッドボードに挿したピンヘッダの上に、写真のように基板を乗せます。の6箇所をはんだ付けします。
    ※ 熱を加えすぎるとブレッドボードが変形するので要注意!
  4. ステレオミニジャックの準備
    ③ではんだ付けした基板の上に、ステレオミニジャックを写真のように乗せます。
    ※ はんだ付けはまだです
  5. ステレオミニジャックのはんだ付け
    ④の状態でブレッドボードから外して裏返します。の5箇所をはんだ付けします。
    ※ 熱の加え過ぎに注意!
  6. 完成
    送信機側と受信機側の計2セットを作製します。

送信回路の組み立て

配線図と写真を見ながら、LED(可視光)で音楽を送信する回路を組み立てます。LEDのアノード(A)とカソード(K)の向き、電解コンデンサのプラスとマイナスの向き、トランジスタの向きに気をつけましょう。抵抗は100kΩ(茶、 黒、 黄、 金)を2本、220Ω(赤、 赤、 茶、 金)を1本使用します。

受信回路の組み立て

配線図と写真を見ながら、フォトICダイオードで可視光を受信してスピーカー(またはイヤホン)から音楽を出力する回路を組み立てます。フォトICダイオードのアノード(A)とカソード(K)の向き、電解コンデンサのプラスとマイナスの向きに気をつけましょう。抵抗は4.7kΩ(黃、 紫、 赤、 金)を1本使用します。

実験しよう

 写真のように送信回路と受信回路に乾電池を接続します。プラスとマイナスを間違えると部品が壊れることがありますので気をつけてください。また、LEDの光を直接覗き込まないようにしましょう。

 送信回路のステレオミニジャックにはステレオミニプラグケーブルで音楽再生機器を接続します。受信回路のステレオミニジャックにはスピーカー(またはイヤホン)を接続します。
※イヤホンの場合は音量を確認してから耳に装着してください。
※スピーカーの場合は音量ボリュームを絞った状態で接続し、徐々にボリュームを上げるようにしてください。

音楽を再生し、LEDの光がフォトICダイオードにうまく当たるように送受信回路の位置を調整します。距離が近すぎるとうまく音楽が鳴りません(音が飽和します)。フォトICダイオードに当たる光の強さで音の大きさが変わりますので、50cm〜1m程度の間で距離をいろいろ変えて試してみましょう。

可視光通信のしくみと応用例

LEDが使われている機器であれば、照明の機能はそのままでデータ通信を実現できます。LEDはただ光っているだけのように見えますが、人間の目では感じられないスピードでデータに合わせて光の強弱を変化させています。可視光通信のしくみについては下記のサイトもぜひ見てください。

電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン、No.47、冬号、pp.174-175
応用例としては、
  • ショッピングモールの天井灯から位置情報を配信して、屋内ナビの実現や店頭広告の提供
  • LED信号機からスポット情報(交通情報や周辺店舗の紹介、周辺イベント情報など)の配信
  • 電波を使用できない水中でのダイバー間通信
などが挙げられます。
電波には無い特徴を活かした可視光通信の応用例は他にもありますので、ぜひ調べてみてください。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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