みなさんは「発光ダイオード(LED)」と聞いて何を思い浮かべますか?きっと、懐中電灯やLED照明、車のヘッドライトなどの照明器具を思い浮かべると思います。LEDには省エネや長寿命など優れた特徴があり、信号機やスマートフォンのバックライトなど幅広い用途で使用されるようになってきました。LEDのように目に見える光のことを「可視光」と呼んでいます。
今回は、Bluetoothヘッドホンのように電波を使うのではなく、「LED(可視光)を使って音楽を伝える装置(可視光通信装置)」を作ってみましょう。
※パーツの名称をクリックすると購入先の一例が表示されます。
抵抗やコンデンサ、導線(ジャンパー線)などの電子部品を穴(ソケット)に挿し込むだけで、電子回路の試作・実験ができるボードです。配線にはんだ付けが要らないので何度でもやり直しができたり、配線を挿し替えるだけで別の回路を簡単に作れたりします。各ソケットが内部でつながっている様子を図中の点線の枠で表しています。
電流を流すと光る素子で、電流の大きさによって明るさが変わります。足の長い方を『アノード』、短い方を『カソード』と呼びます。配線の際はアノードとカソードの向き(極性)に気をつけましょう。
光を当てると電流が発生する素子で、明るさによって電流の大きさが変わります。受光部(突起部分)を表にして見たときに左側が『カソード』、右側が『アノード』になります。配線の際はアノードとカソードの向き(極性)に気をつけましょう。LEDとは逆になります。
電気(電荷)を蓄えたり放出したりする素子で、直流を通さない(絶縁する)素子でもあります。足の長い方が『プラス』、短い方が『マイナス』です。配線の際はプラスとマイナスの向き(極性)に気をつけましょう。
電流の大きさを調整する素子です。抵抗の値は4本の帯の色で見分けます。極性(向き)はありません。
電気(電流)の流れをコントロールする部品です。小さな電流を大きくしたり(増幅)、電流をオン・オフしたり(スイッチング)できます。足が3本あり、型番がプリントされている方を表にして見たときに、左から『エミッタ』『コレクタ』『ベース』と呼びます。配線の際はトランジスタの向きに気をつけましょう。
音楽を入出力するためのジャック(3.5mmステレオミニプラグケーブルと回路を接続する部品)です。後述の説明にしたがってはんだ付けをしてから使用します。
スマートフォンや音楽プレーヤーなど音楽を再生する機器と可視光送信機を接続するケーブルです。
単3形乾電池(計6V)を入れて使用します。ブレッドボードに接続しやすいように、バッテリースナップにジャンパーワイヤが付いています。送信機と受信機の両方に必要です。
セットには10種類100本のジャンパー線が入っていますが、今回は、黄色8本、橙色2本、青色2本、灰色2本のジャンパー線を使います。0Ωの抵抗やビニール線など導線の役割をするものであれば代用できます。
3.5mmイヤホンジャック付きの機器であれば何でも構いません。
3.5mmステレオミニケーブルでパソコンに接続するタイプのスピーカーであれば何でも構いません。スピーカーの代わりにイヤホン(3極プラグ)でも代用できますが、イヤホンマイク(4極プラグ)では音楽が聞こえない場合があります。
音楽プレーヤーやスマートフォンなどの音楽再生機器を接続するジャック(送信機側)と、受信した音楽を聴くためにスピーカーやイヤホンを接続するジャック(受信機側)の計2セットを作製(はんだ付け)します。
購入した3.5mmステレオミニジャックDIP化キットは左の写真のように3点の部品が同梱されています。ピンヘッダ(一番左の部品)を右の写真のように切り離します。1つのピンは予備になります。
ブレッドボードを利用してはんだ付けをします。まず、ピンヘッダを写真の場所に挿します。
配線図と写真を見ながら、LED(可視光)で音楽を送信する回路を組み立てます。LEDのアノード(A)とカソード(K)の向き、電解コンデンサのプラスとマイナスの向き、トランジスタの向きに気をつけましょう。抵抗は100kΩ(茶、 黒、 黄、 金)を2本、220Ω(赤、 赤、 茶、 金)を1本使用します。
配線図と写真を見ながら、フォトICダイオードで可視光を受信してスピーカー(またはイヤホン)から音楽を出力する回路を組み立てます。フォトICダイオードのアノード(A)とカソード(K)の向き、電解コンデンサのプラスとマイナスの向きに気をつけましょう。抵抗は4.7kΩ(黃、 紫、 赤、 金)を1本使用します。
写真のように送信回路と受信回路に乾電池を接続します。プラスとマイナスを間違えると部品が壊れることがありますので気をつけてください。また、LEDの光を直接覗き込まないようにしましょう。
送信回路のステレオミニジャックにはステレオミニプラグケーブルで音楽再生機器を接続します。受信回路のステレオミニジャックにはスピーカー(またはイヤホン)を接続します。
※イヤホンの場合は音量を確認してから耳に装着してください。
※スピーカーの場合は音量ボリュームを絞った状態で接続し、徐々にボリュームを上げるようにしてください。
音楽を再生し、LEDの光がフォトICダイオードにうまく当たるように送受信回路の位置を調整します。距離が近すぎるとうまく音楽が鳴りません(音が飽和します)。フォトICダイオードに当たる光の強さで音の大きさが変わりますので、50cm〜1m程度の間で距離をいろいろ変えて試してみましょう。
LEDが使われている機器であれば、照明の機能はそのままでデータ通信を実現できます。LEDはただ光っているだけのように見えますが、人間の目では感じられないスピードでデータに合わせて光の強弱を変化させています。可視光通信のしくみについては下記のサイトもぜひ見てください。
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン、No.47、冬号、pp.174-175掲載大学 学部 |
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