「物質」を原子が見える程度まで拡大してみると様々な元素が規則正しく配列した構造(結晶)を持っていることが分かります。物質が示す様々な性質の多くは元素の種類と結晶構造の組み合わせにより決まります。最近ではパソコン上でもたやすく結晶構造を見ることは出来、簡単な構造は容易に理解できますが、複雑な構造では専門家でさえ紙面上はもちろんコンピュータ上でもなかなか理解しにくいことがあります。三次元の構造模型が有れば初心者でも複雑な結晶構造を理解できるし、研究者にとっても問題を検討するのに有益です。ここでは代表的な金属とセラミックスの構造と性質を理解すると共に実際にそれらの結晶模型を作成してみます。
結晶模型にもいろいろな種類がありますが、今回は原子を球体で表現して、その結合を棒で結んで表現する“ボール&スティック”タイプです。
ボールはいろいろな大きさや色のものが比較的入手しやすいスーパーボールを用います。棒は直径3mmφのプラスチック棒を用います。少し太めの竹串でも作成できます。また大きな結晶模型を作る場合など格子の主軸部分には真鍮の棒を使う場合もあります。
構造の検討(単位格子、結合角、結合距離)
結晶における格子定数や各原子の原子座標から各原子間の結合距離および結合角を算出し、単位格子を作るのに必要な玉の数を把握しておきます。
例えば体心立方構造(BCC)の鉄(Fe)の場合、格子定数a=0.0861 nm で各部分の軸比および角度は以下のようになります。また9個の玉が必要です。
専用ジグで結合方向である立体角を玉の表面上にプロットし、穴あけをします。
3mmφの棒を使用しますが、弾力により穴開け後に穴が縮みますので3.2mmφのドリルを使用します。また穴開けをスムースに行うために、ドリル先端を鋭角になるように加工しています。
研究室オリジナルの立体角プロット用ジグ
卓上ボール盤
(手前のドリルは手動で行う場合に使用する)
所定の長さの軸を切り出します。
ペンチやニッパーを用いて棒をカットします。
軸の長さは 1A= 0.1nm →20mm で換算します。
また玉の中心で軸がぶつからないようにするために、実際の軸の長さは玉の中心間の長さより5mm短くして切断します。
軸の長さ=(結合距離nm)×200–5(mm)で計算します。
玉と軸を結合して結晶模型を作製する。
最初は多少いびつかもしれませんが、徐々に形を整えて、完成です。
また、体心立方構造の中心の玉を別の色に置き換えれば、CsCl型構造になります。
面心立方構造FCCと体心立方構造BCC
六方最密充填構造HCP
岩塩型構造
ルチル型構造
Cu2O型構造
閃亜鉛鉱構造とウルツ鉱構造(多形)
炭化タングステン型構造
C型希土類型構造
β-クリストバライト型構造
スピネル型構造
FCCとHCPの積層
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