分子の形を知るためにはどうすれば良いのでしょうか。分子を構成する原子はとても小さいので、光学顕微鏡でも見ることはできません。分子の形を正確に知る方法の一つにX線結晶構造解析があります。X線結晶構造解析とは、調べたい分子の結晶を作り、それにX線を当てて回折点を測定し、その測定値をプログラムで処理することで、分子の立体構造を知る方法で、きれいな結晶を作成できれば、分子中の0.01 nm = 10 pmの長さの違いを検出することもできます。
今回は、砂糖、塩、味の素の結晶を作成する実験を紹介します。なお、家庭で実験できるように、実験室で通常使用する器具の代替品を用いた方法を示しています。身近な物質のきれいな結晶を作成し、観察することを楽しんでもらえれば幸いです。
きれいな結晶を作成するためには、不純物は大敵です。ごみや汚れが極力入らないように気を付けてください。使用する器具は前もって洗って乾燥させておきましょう。加熱した溶液を取り扱う際にはやけどに十分気を付けてください。加熱した溶液が熱いうちに実験を進めた方が結晶ができやすいです。結晶が大きく成長するためには、周囲の大きな温度変化や振動がないように工夫してください。手順通りにおこなっても状態の微妙な違いにより、きれいな結晶が作成できない場合があります。
耐熱性コップ2個をそれぞれA,Bとし、耐熱性ガラス小皿1個をCとする。
コップAに80gの砂糖を量り取る。
コップBに純水20mlを入れ、電子レンジで100℃近くまで加熱する。小皿Cに純水を少量入れ、電子レンジで加熱して、取り出して置いておく。
コップAにコップ Bで熱した純水をすべて加えた後、スプーンで素早くかき混ぜて砂糖を溶かす。かき混ぜる際に温度が下がるので、電子レンジで20秒ほど加熱し、かき混ぜる操作を3回程度繰り返す。砂糖が少し溶け残るくらいかき混ぜれば良い。
コップBの内側を布や紙で拭いた後、コップBに茶こしを乗せてお茶パック等をセットし、コップAの溶液をろ過する(コップを拭く際には繊維が残らないように注意する)。ろ過するときには、溶け残った砂糖はスプーン等で先にお茶パックに入れておく方が良い。ろ過が終わったら、茶こしを外す。
小皿Cの純水を捨て、布や紙で拭いた後、ガーゼや紙を敷いたテーブルに置く。4)でつくったろ液にストローを入れ、指でふたをして、溶液を取り出し、小皿Cの底面に溶液が盛り上がるように静かに数滴を置く。小皿Cを液が垂れないように上手に逆さまにして、ガーゼか紙を敷いたテーブルに1日程度置いておくと、結晶ができる。
できた結晶をルーペで観察する(うまく位置を合わせれば写真も撮れます)。
原子や分子の一団が同じ方向を向いて、同じ間隔で並んでいるものです。イメージとして、図のように表されることがあります。緑が分子、黒枠が結晶格子です。繰り返しの形状は直方体だけでなく、いくつかの種類があります。
砂糖やL-グルタミン酸ナトリウムは原子が共有結合して分子を形成しています。分子の構造の中でも動きやすい部分と動きにくい部分があります。図は砂糖の主成分のショ糖の結晶中の分子構造(stick図、spacefilling図)です。
stick図の方が全体像は見えやすいですが、原子には大きさがありますので、実際はspacefilling図に近いと考えられます。
(Mercury (CCDC)を使用して作図)
掲載大学 学部 |
豊橋技術科学大学 | 豊橋技術科学大学のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |