“偏光フィルム”を見たことがないという人も、これを利用した道具は日ごろ目にしています。液晶モニタはその代表例です。偏光フィルムは見かけ上、ただの半透明なフィルムにしか見えません。
では偏光とは何でしょう。光は波の性質を持っていますが、太陽光や蛍光灯の光は波の振動の向きがばらばらです。このようなふつうの光のことを“偏光していない光”といいます。一方で偏光している光とは、波の振動が一つの向きにそろった(つまり偏った)もののことです。液晶モニタの光や水面の反射光は、偏光しています。ですから偏光しているかどうかは、肉眼ではわからないのです。
偏光フィルムは、ある特定方向に振動する光だけを通すので、“偏光を作るフィルタ”として機能します。液晶モニタでは通常この偏光フィルムが使われていて、モニタから出る光は偏光していることになります。偏光フィルムを通して液晶モニタを見ると、その性質がわかるでしょう。
偏光フィルムの作成は次の3段階の手順で行います。
市販のPVA試薬は白色粉末の形をしています。
はじめにこれを水に溶かし、透明な液体状態にします。
PVA5gを50mlの水に加熱溶解させる。液体が透明になったら細かい気泡が無くなるまで静置する。
ガラス板 (10 cm×10 cm)の両端に短冊状のプラスチック板 (1 cm×10 cm)をクリップで固定する。
PVA溶液に気泡が入らないようにガラス板にたらし、均一に延ばす。
ガラス板ごと約50℃のホットプレート上で60分静置乾燥または2日間常温乾燥させる。
乾燥したPVAフィルムをゆっくりと引き剥がす。
剥がしたフィルムは周囲を切り取り、約5 cm角のシートにする。
PVAフィルムそのものは透明で偏光特性がありません。
また、せっかく乾かしたフィルムも、ちょっと濡れただけで膨潤して形が崩れてしまいます。
そこで次の手順では、可視光を吸収するヨウ素で染色し、さらにホウ酸でフィルムを構成するPVA分子同士に結合を作り、安定化させます。
少量の水にヨウ素0.2gとヨウ化カリウム0.5gを加えヨウ素溶液とし、これを500mlの4%ホウ酸溶液に加えて染色液を作る。
手にゴム手袋をして、PVAフィルムを染色液に15~30秒間浸漬する。
フィルムを染色液より引き上げて、ろ紙上に広げ、水滴を吸収させる。
フィルムが濡れているうちに、両端を引っ張ります。
これによってPVAとヨウ素分子が引っ張った方向に配向し、偏光特性が生まれます。この状態で乾燥させれば配向した形状のままで固まるので、偏光フィルムの出来上がりとなります。
短冊状の板にフィルムの両端を細い板ではさんで固定する。
一方を固定し他方をゆっくり動かして約2-3倍の長さまで引き延ばす。両端をクランプで固定し、引き延ばしたまま約30分乾燥させる。
中央部分を適当な大きさに切り取れば偏光フィルムの完成。
作った偏光フィルムを使って、偏光特性を調べてみましょう。
板倉聖宣、“偏光板で遊ぼう” 仮説社
平田允、“偏光に関する教材と偏光板の製作”
http://www.asahi-net.or.jp/~uu9m-hrt/henkou/henkouban.htm
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