電気を通すプラスチックで液晶ディスプレイを作ってみよう |
現在、私たちの身の回りを見渡してみると、時計や携帯電話、電卓、パソコンなどさまざまな電子機器の表示素子として液晶ディスプレイが使われています。でも自分で作ったことがあるという人はほとんどいないはず。ここでは、「導電性高分子」と「液晶分子」を組み合わせて、曲げたりねじったりできるフレキシブルな「高分子分散型液晶ディスプレイ」を作ります。好きな文字やデザインを考えてきてください。世界に一つしかないオリジナル液晶ディスプレイを作って、実際に電気をかけて動かしてみましょう。
これまで高分子(プラスチック)は電気を通さない絶縁体と考えられてきましたが、白川英樹博士らはこのような常識をくつがえす「導電性高分子」を発見し、2000年ノーベル化学賞を受賞されました。では、導電性高分子はふつうのプラスチックとどこが違うのでしょうか? 原子や分子をつなぐにはお互いに電子を出し合い「結合」を作る必要があります。パイ電子とよばれるものも結合に使われますが、結合の通り道がつながっていればパイ電子はその上を動くことができるのです。でも、通り道が全部埋まっていれば動くことができないので、「空席」を作ってやる必要があります。ヨウ素のようなものを加えると高分子の一部の電子が奪われて空席ができ、パイ電子はすいすいと動けるようになり電気が流れるのです。これを「ドーピング」といいます。これまで多くの導電性高分子が作られており、「合成金属」と呼ばれることもあります。
導電性高分子発見のきっかけとなった
ポリアセチレンのドーピング
ここでは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸をドーピングした導電性高分子水溶液(PEDOT/PSS)を用います。PEDOT/PSS は電気的・化学的安定性に優れ、かつ透明なことから、帯電防止剤や固体電解コンデンサ、エレクトロクロミック素子、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などに広く使われています。
液晶ディスプレイには多くの種類がありますが、ここでは「高分子分散型液晶ディスプレイ」を作ります。このディスプレイは、高分子の中に液晶の小さな粒子が分散していて、この粒子が光を散乱するため白く濁って見えます。これは雲が白く見えるのと同じ原理です。電圧をかけると液晶分子は電場方向に配向し、光の散乱が抑えられ透明になります。すなわちこのディスプレイは、散乱・非散乱の状態変化に基づく白・透明のコントラスト変化を利用しています。そのため、従来の液晶ディスプレイとは異なり偏光板が不要で、その分明るさのアップが期待できます。その他に、視角依存性が少ない、電極表面の配向処理が不要、作製が簡単などの特徴があります。
下に示したデザインシートの左側の枠に、にサインペンで好きな文字やデザインを書く。このとき、文字やデザインの一部が完全に閉じた状態にならないよう注意する(例えば円を書くとき、どこか一箇所開けておく)。
作成したデザインをスキャナーで取り込み、OHPシートに印刷する。
導電性高分子の溶液をピペットで取り、OHPシートの「溶液滴下ゾーン」に線状に垂らす。
ドライヤーのスイッチを入れ、試験管を使って導電性高分子の溶液を薄く延ばすようにして左右の枠の中に塗る。完全に乾くまでドライヤーをあてる。
2枚の電極をハサミで切り取り、それぞれトルエン中で約1分間超音波洗浄してトナーを洗い落とす。洗浄後にドライヤーで乾かす。これで電極の出来上がり。
デザインを書いた電極の導電面をテスターで確認し、その上に液晶と光学接着剤の混合液をサイコロの5の形になるよう、5箇所に1滴ずつ落とす。
これにもう1つの電極を、導電面が向かい合うように、左右1cmくらいずらして重ねる(上図の網掛けの部分が重なるように)。
2枚の電極間の液体が薄く均一に広がるまで数分間待つ。
紫外線ランプを使って約3分間紫外線を照射し、2枚の電極を接着する。このとき接着部分は白濁する。これで完成!
完成した液晶ディスプレイの両端をクリップで挟み電圧をかけてみよう!
導電性高分子や液晶について「もっと知りたい!」という人は、以下の本を参考にしてみてください。
掲載大学 学部 |
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