皆さん、こんにちは。読み始めてくださりありがとうございます。このコーナーは、工学部に所属する教員から生の声を届けることが目的で、既に素晴らしい記事がたくさん載っています。ぜひ目を通してみてください。貴重な機会をいただきこの記事を書いていますが、私は理学部を出て学際系の大学院に進学し、教員になり初めて工学部に所属しました。その今の声が「工学部は楽しい」です。
皆さんにとって工学部をイメージさせる言葉は何でしょうか?私は「つくる」です。実に多くのこと・ものが工学部では「つくる」対象として研究されています。でも、たとえば「宇宙」「地球」「生命」「細胞」をつくりたい、と思ったらどうでしょう。つくれるでしょうか。「つくる」とは何か、を考えることになりますから、楽しそうです。「つくる」には自然においてどう「つくられる」のかの研究も大切です。工学部の研究は皆さんの想像する以上に自然や社会の仕組みを理解することに貢献しています。
私はこれまで人工細胞モデルをつくる研究に取り組んできました。細胞を取り囲む膜と同じ構造を持った人工小胞(ベシクル)に興味があり、とくに細胞に似た大きさ(直径10~100μm)のものをたくさんつくるにはどうしたらよいか、考えています。細胞膜の主成分は、やや油っぽい両親媒性分子であるリン脂質で、水中で自然に細胞膜のように集合します(脂質二分子膜)。この小胞はリポソームとも呼ばれ、リン脂質は生体適合性が高い(生体にやさしい)ことから、化粧品や医薬品のミクロカプセルにも利用されます。mRNAワクチンの形はこの仲間です。このリポソームは、不思議なことに、大きさが細胞に近づくと、つくりにくくなり、大量かつ効率的につくるには種々の工夫が必要になります。培養すれば細胞はどんどん増えますが、リポソームはそうではありません。私たちはちょっとした工夫をして、写真のような大きなリポソームをつくる方法を開発できました。
分子を「手玉に取る。」以前、有機化学者の先生から聞いて強く印象に残ったフレーズです。頭の中ではイメージできても、実際に目の前で、自分の手で、欲しいものがつくれるでしょうか。リポソームは小さいので、できたかどうか、顕微鏡で観察します。思い通りの結果ならもちろん、思いもかけなかった結果ならなおさら、楽しく感じます。皆さんは何がつくりたいですか?
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