コンピュータの父と呼ばれるアラン・チューリングは、計算機科学の分野では「チューリングテスト」で広く知られています。このテストは、人間が機械と対話し、その機械が人間と機械を判別できない場合、その機械が実際に「思考」していると見なすというものです。しかし、アラン・チューリングは計算機科学の領域だけでなく、数学者、暗号研究者、哲学者としても非凡な業績を残し、さらにはマラソンランナーとしても輝かしい記録を残しています。
チューリングの形態形成と数理生物学の研究では、「チューリングパターン」と呼ばれる空間パターンが、不安定化形態形成によって自発的に形成されることが理論的示されていますが、彼の没後、後続の研究者によって化学反応によって生成される螺旋波、タテジマキンチャクダイ、シマウマの縞模様などもチューリングパターンであることが解明されています。
私たちの研究室では、プロジェクタによる投影とカメラによる撮影を用いた繰り返し処理によって光投影を行うことで、物体の色彩や質感を驚くほど変化させる光学制御技術の研究に没頭しています。この技術のエンターテイメント応用として、制御を破綻させることで波紋のような美しい模様を生み出すプロジェクションマッピング手法(図1)を考案していますが、最新の研究によって、これらの模様がチューリングパターンであることが理論的に確認されました(図2)。
私たちは生物や化学反応とは無関係のように思われるプロジェクタとカメラを用いた計算機システムにおいても同じ原理が働いていることに魅了されています。アラン・チューリングの素晴らしい業績を再認識するとともに、空間拡張現実感の領域で彼の遺産を探求しています。
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