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生レポート!大学教授の声

大学での研究

2023年12月15日
国立大学法人九州工業大学
石原 大輔
大学での研究

 高校生に向けて何を書くか大層迷ったが、「大学での研究」に興味のある読者は少なくないであろうと思い、私の取り組んでいる研究を紹介することにした。

 私は飛ぶ昆虫が好きである。子供の頃は網を持ってトンボや蝶をよく追いかけた。今は飛ぶ昆虫を対象に研究に取り組んでいる。といっても生物学の立場ではなく、工学の立場からである。特に、本来の専門分野である計算力学シミュレーション(力学現象をコンピュータの中で数値的に再現する方法論)を駆使して、昆虫が飛ぶメカニズムの解明に取り組んでいる。さらに、その成果を新しい人工物の創成につなげようとしている。この一連のプロセスを私たちは計算バイオミメティクスと呼んでおり、他の生物にも一般化することで、新しい学問分野として体系化できないかを模索している。

 飛ぶ昆虫は、数億年という途方もない永い時の試練により、極度に洗練されてきた。この自然の解に倣えば、数ミリメートル程度の飛行ロボットも原理的には可能なはずである。しかし、その工学的な解を見出すことは大変難しい。例えば、昆虫の翼は、数ミリ秒で1回羽ばたく中で複雑な運動パターンを示すが、それを人工的に再現することは大変難しい。計算バイオミメティクスでは、計算力学シミュレーションによって、昆虫がどのようにしているかを正確に理解するところから始まる。その結果、私たちは、翼の複雑な運動パターンが翼と空気との相互作用によって受動的に生成されることを、明らかにした。このメカニズムは翼の駆動機構の単純化に寄与するので、数ミリメートル程度の飛行ロボットへの突破口になると考えられる。次の段階として、現在、このメカニズムを用いた1㎝程度の飛行体を、計算力学シミュレーションによって設計し、半導体製造技術を応用して作製しているところである。数ミリメートル程度の飛行ロボットへの道程はまだまだ長い。ゆえに、私たちと一緒にこの課題に挑戦しようという若い人が現れることを期待している。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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