近年、地球温暖化とそれに伴う異常気象が数多く報告されています。我が国でも台風や集中豪雨、ゲリラ豪雨による被害が多発しています。とくに九州地方はこのような豪雨被害が多発する地域であり、その対策は重要な研究テーマのひとつです。大分大学理工学部流体工学研究室では、豪雨災害に対して災害の発生を防止・遅延と、避難先での避難者の居住環境の改善という2つのテーマについて研究を行っています。
豪雨災害では河川の増水や氾濫を防ぐことが重要ですが、根本的な対策にはダム建設をはじめとした大規模な土木工事が必要となり、莫大な費用と時間がかかります。そこで、より安価かつ簡便に流域治水を行う方法として田んぼダムが注目されています。私たちは、大分県庁、土地改良事業団および地域の農家と連携して田んぼダムについての調査・研究を行っています。図1は、圃場の水位を調節する堰板と排水桝における豪雨発生時の排水挙動の数値シミュレーション結果を示したものです。増水時と減衰時の水位の変動の違いが確認できます。田んぼダムの導入には上・中流域の農家からの理解が不可欠な上、季節ごとの稲の生育状況に合わせた増水時の水位管理も今後の重要な課題です。
もう一つは、災害発生時に避難が必要となった場合の研究です。多くの場合、学校の体育館や公民館等の集会所などが災害発生時の避難場所として指定されていますが、これらの施設は人員の収容人数はともかくとして避難者が数日間生活するのに適切な場所であるとは言えません。とくに高齢者や基礎疾患のある人々については持病の悪化や感染症への罹患などの問題があります。そこで大分大学では様々な規模の避難所における環境の調査とその改善についての学部横断的な研究プロジェクトが発足しています。図2は比較的小規模な室内のモデル、図3はこの部屋における自然換気の状況に対する換気(汚染物質等)のシミュレーション結果です。ここでは花粉や埃など重力沈降する微粒子が窓やドアから流入する気流によってどのようにふるまうのかを評価しています。部屋の体積に相当する流量の空気が流入・流出してもおよそ3~4割程度しか粒子の排出が行われていないことがわかります。現在は実地での計測も含めて避難所内の温度や湿度の保全と適切な換気の両立に向けた研究を進めています。
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