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青空高く羽ばたく鳥型飛行ロボットをめざして

2016年2月12日
九州工業大学 情報工学部
図1 羽ばたき飛行ロボット図1 羽ばたき飛行ロボット

 近年、ドローンに代表される飛行ロボットに注目が集まっています。残念ながら2015年はドローンを用いた事件が多く発生し、ネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし一方で、大学の研究室や産業界では、飛行ロボットを有効に活用する研究・取り組みが活発に行われています。橋やトンネルの検査、火山の観測・調査、農業や林業への応用、建物の警備や宅配物の運搬など、今後、飛行ロボットがより身近なものになっていくことが期待されています。

 ところで、皆さんのもっとも身近な「飛ぶもの」といえば、鳥や昆虫ではないでしょうか。また、一度は「鳥のように自由に空を飛びたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。人間が鳥のように飛ぼうとする試みは、ギリシャ神話のイカロスの翼にも登場するほど非常に古くから行われていました。現在は飛行機に代表される航空機が非常に発達し、鳥のような羽ばたき飛行の試みは少なくなっています。しかし、鳥は、飛行機やヘリコプタ・ドローンとは異なる優れた特性をたくさん持っています。まっすぐ飛ぶだけではなく、急旋回や急上昇、急降下ができ、また、翼を大きく広げることによってエネルギーをほとんど使わない滑空飛行に切り替え、長距離を飛行することができます。逆に、激しく翼を動かすことによって空中の1点にとどまるホバリングを行うことができる鳥もいます。さらに、鳥は飛び立つときや着地するときには飛行機のような長い滑走路を必要としません。地上にいるときや木の枝に止まっているときは翼を折りたたむことができるので、こちらも飛行機のような大きな格納庫(巣)は必要ありません。鳥の羽ばたきは、飛行機のエンジンやヘリコプタ・ドローンなどの回転翼に比べて動作速度が遅く、大きな音も発しません。そのため、人間が鳥の羽ばたきに対して危険を感じることは少ないです。このように、鳥は飛行機にはない優れた点を多く持っています。

 九州工業大学機械情報工学科の大竹研究室では、このような鳥の優れた特性を有する鳥型ロボットの開発を進めています。図1は研究室で開発した羽ばたき飛行ロボットです。長距離を飛行するワタリガラスを参考にした機体で、横幅はおよそ1mあります。左右の翼を同時に羽ばたかせることで図2のように羽ばたき飛行を実現できます。また、左右の翼の羽ばたき方を変えたり、羽ばたく位置を上下にずらしたりすると、前に進む力の向きを左右・上下に変化させることが可能になります。現在は、風の吹く屋外での自律的な飛行を目指して研究を行っています。

図2 飛行実験の様子図2 飛行実験の様子

 鳥の翼は、図3に示すように人間の腕と似た構造(上腕、前腕、手)を持っています。翼には関節があり、単純に翼を上下に動かすだけではなく、ひじを屈曲・伸展させたり、手首を折り曲げたり、腕をひねったりすることで複雑な翼の動きを作り出し、効率の良い飛行や様々な飛び方を実現しています。また、関節を折り曲げることによって翼を折りたたむこともできます。図4は、鳥の翼の複雑な動きを再現するために、翼に関節を持たせた多関節羽ばたきロボットです。翼の上下の羽ばたき運動だけでなく、前後運動、ひねり、折り曲げ動作を行うことができます。また、翼を折りたたむこともできます。図5は羽ばたき動作を行っているときの様子です。鳥のような羽ばたき動作を実現できています。現在は、羽ばたき動作によって発生する力の大きさや向きを測り、大きな力が得られる羽ばたき方を調査しています。

図3 翼の構造図3 翼の構造
図4 多関節羽ばたきロボット図4 多関節羽ばたきロボット
図5 羽ばたき実験の様子図5 羽ばたき実験の様子

 鳥型飛行ロボットは、優れた飛行特性と安全性・静音性から従来の飛行ロボットに代わる新たな飛行ロボットとして期待されており、今後も、本物の鳥のような優れた特性を有する飛行ロボットの研究・開発を進めていきます。

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