社会基盤施設を始めとするさまざまな自然・人工構造物を合理的に監視し、人間環境の安全・安心化を図ることは全世界共通の関心事です。これまでに実施されてきた従来のモニタリング手法では、コスト、人材不足などの理由で「手法や必要な装置は存在するが、実際にはすべての場所でモニタリングと安全管理を実施することはできない」というジレンマがありました。
この点を克服するために、2006年度から展開して来た「対象物に生じている変状を視覚で確認する方法」では、計測装置がデータ表示機を兼ねるという特徴があるため、計測結果が「光の色として、いつでも誰にでも見えている」という状態を創り上げることができます。
このコンセプト”On-Site Visualization”は、これまでに存在しなかった全く新しいものであり、装置のコストダウン化を実現できれば、これまでよりも格段に広範囲のモニタリングが可能となります。また、可視化される安全・危険情報の監視者人数を飛躍的に増大させることが可能となるため、さまざまな形態の異常を早期に発見し、事故を防止できるとともに、人的被害などを最小限に抑えることができる可能性を秘めています。
このプロジェクトを推進するためには、専門家と一般市民が協力することにより「動きの大きさ、光の色、その色が示す危険度」についての共通の認識を生み出す必要があります。社会環境の安全性評価は、これまで専門家だけに委ねられていましたが、光を用いるこの手法は、施主や技術者が住民と一体となってそれを実施してゆく新しい社会システムが必要になります。
また、一般構造物を対象とした場合には「変位」や「傾斜」を計測することが想像されますが、その他にも、科学的に計測可能なすべてのデータを対象とした「光による状態監視システム」を創造することも可能です。さらに、人間環境の安全・安心化を総合的に推進するためには、工学だけではなく、自然科学のほとんどの分野、また社会科学やエンタテイメントなどの幅広い分野にこの方法論を適用することも可能であり、「光の色」を情報伝達の核に置くことの学際的意義は非常に大きいと言えます。
芥川研究室では、上記趣旨に賛同する産・官・学・民からの組織、および個人による参加を得て、光る計測装置の開発・改良と実社会への適用を通じて、人間の労働、生活環境の安全・安心化における新しい概念”On-Site Visualization”を国内的、および国際的に普及させるための研究活動を積極的に展開しています。
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