2020年1月24日
関東地区
研究グループ
群馬大学理工学府分子科学部門 環境調和型研究室
群馬大学理工学部 理工学系技術部機器分析部門
群馬大学食健康学教育研究センター 食品開発ユニット、食品機能解析ユニット
プラスチックは現代社会を支える重要な材料ですが、プラスチックごみの増加による環境汚染は全世界的な問題になっています。これらの問題の解決策として、生分解性プラスチックが環境調和型材料として注目されています(図1)。私たちの研究グループでは、来るべき持続可能な社会の構築を目指して、生分解性プラスチックの開発に取組んでいます。現状、市販されている生分解性プラスチックの種類は限られており、普及はしていません。これは、プラスチックでは「生分解性」という性質と丈夫であり成形しやすいといった一般的な特徴との両立が難しいことが原因です。そこで、私たちの研究グループでは、この生分解性プラスチック特有の「生分解性」という性質をよく理解し、これを制御できる技術開発に取り組んでいます(図2)。生分解性を自在に設定できる材料が創出できれば、使用中はまったく分解せず通常のプラスチック同様丈夫で、使用後に即座に分解しゴミにならない理想的な生分解性プラスチックとなります。このような材料による従来材料の代替が進めば、海洋プラスチックゴミ問題などの解決の一助となるかもしれません。
環境に拡散するプラスチックゴミを減らすには、プラスチックの減容化、リサイクルの促進、適正処理が最も効果的です。一方、食品や医薬品など衛生的用途におけるプラスチックの利用は、私たちの生活に安全・安心をもたらしています。これらのプラスチック使用が避けにくい用途においては、従来のプラスチックに替わって生分解性プラスチックの使用が望まれます。食品パッケージング、トイレタリー製品などに加えて、農業用マルチフィルム、漁具など回収が困難な用途にも生分解性プラスチックの活用が期待されています。
生分解性プラスチックは、最終的には水と二酸化炭素になり完全に炭素サイクルに取り込まれる環境調和型材料の一つです。生分解性プラスチックは、プラスチックゴミのない環境調和型社会実現を支援します。また、サーキュラーエコノミーにおいては、プラスチックは様々な形でのリサイクル資源として期待されていますが、生分解性プラスチックは生態系の中での「有機リサイクル(organic recycling)」を実現します。
これらの研究は、JST未来社会創造事業:『ゲームチェンジングテクノロジー』による低炭素社会の実現」、NEDO先導研究プログラム:海洋プラスチックごみ問題を解決する海洋分解性プラスチックの技術開発 (群馬大学、日清紡ケミカルとの共同採択)として推進されています。
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