快い音環境の実現を目指して |
‘音’は、言葉や信号として情報伝達の手段であり、音楽として心をなごます芸術であります。一方、騒音として安らぎを妨げる邪魔者でもあります。目を閉じれば物は見えませんが、耳を塞いでも音は聞こえてきます。人間は生まれてこの方ずっと音の世界の中に浸っており、音は生活に欠かせません。そのような音の世界をより快適に過ごしたいものです。
楽音や音声は他に譲るとして、ここでは騒音に注目しましょう。“騒音”とは、聞く人を不快にさせる音すべてを含んでいます。電車の中の携帯電話の声、隣のピアノの音など音楽や音声であっても、聞く人によってそれは騒音となります。騒音は一過性で蓄積型の公害ではないと言う人もいますが、とんでもありません。ストレスは心に蓄積してしまうものです。かといって音の無い世界はどうでしょうか。それはまた大きなストレスを生むに違いありません。ひとつの音を静かにすれば、また別の音が気になりだします。耳につきだすとその音ばかりが気になります。騒音とはまったく厄介なものです。
人の生活において、より快適な音環境を実現することが、ますます望まれるようになってきており、機械や住宅の静粛化が重要な課題となっています。また最近、自動車や家電のように生活に身近な製品では、それ‘らしい音’を求める音響デザインまで視野に入れた製品開発が行われるようになってきています。鳥取大学では、そのような望ましい音環境を実現するために、種々の革新的音響制御技術の開発に取り組んでいます。
「スピーカで逆位相の音を発生し、元の音をキャンセル消音する」アクティブノイズコントロール技術はかなり広まってきましたが、鳥取大学では、「風は通すが音は通さない窓(アクティブ音響シールディング)」や「どんなに動いても常に耳元の音は静かであるANC帽子」などユニークな発想のANC技術の開発で世界をリードしています。
鳥の羽毛からの着想で、物体表面に柔毛材や多孔材を設置することが風きり音の低減に有効なことがわかってきました。本技術は送風機や風車の低騒音化、高速車両や自動車の低騒音化への応用が期待されています。
「臭い物には蓋を」の発想のとおり、これまでの騒音対策は音源を囲い込んでいました。鳥取大学では、逆に音を不要なところへ逃がし、目的とするところの音を低減する技術を開発しました。そこに用いる音響透過壁は「風は通さないが音を通す壁」で、派生技術として、「音の透過量を自由にコントロールできる壁」の開発にも取り組んでいます。
風は通すが音は通さない窓
(アクティブ音響シールディング)
高速車両の低騒音化
(共同研究)
掲載大学 学部 |
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