私の専門は機械工学ですが、その中で「機械力学」と呼ばれる分野の研究と教育に携わっています。機械工学では、四力学(材料力学、機械力学、熱力学、流体力学)と通称される基幹的な専門科目があり、どの大学の機械系学科でも学修がほぼ必須です。将来、皆さんが機械系技術者・研究者を目指すのであれば、これらを大学生の間に理解しておくことが重要で、生涯の知識として仕事に活かすことになると思います。
機械力学とは、物体に働く力とそれによって生じる運動の関係を理解するための学問です。高校物理では放物運動、等速直線運動、振り子運動、単振動などを学ぶと思いますが、ご存知のとおりこれらはニュートンの運動法則によって説明されます。運動の第二法則では運動方程式が登場します。ただし、物体の運動はこの法則に従うと言われても、高校物理において実際に円運動や単振動の速度、周期等の値を、運動方程式を直接的に解いて導くことは少ないかもしれません。機械力学では、物体の動きを表す運動方程式から出発し、この微分方程式を数学的に解いて、運動の特徴を表す各量を求めます。物理だけでなく数学の知識もフル活用します。ここで大切なことは、問題ごとに結果の式を「知識」として覚えるのではなく、原理を理解し、問題によらず一貫した方法論に基づいて結果を導き出す力を身につけることです。同じことは、四力学全てに当てはまります。
機械工学には四力学以外にも重要な学問分野がいくつもあります。例えば材料工学、加工学、機構学、制御工学など、機械を形づくり、動かすための知識です。さらに、電気・電子工学や情報工学、化学なども取り入れて、機械や材料機能の高度化を図るための知識を学びます。このように、四力学を核とする機械工学系科目の専門知識を持ちつつ、多様な分野の知識を活用し他分野へも技術を展開できることが、機械工学が「総合工学」と呼ばれるゆえんです。現在、単に高性能で便利というだけでは、人々が機械を使ってくれない時代になりつつあります。個人の特性に合う、人に寄り添い支援する、人のように賢い、環境に優しい、など、これからの機械には人と環境への配慮がますます重視されるでしょう。AIの上手な利用も考える必要があるかもしれません。機械に関心のある皆さんには、機械技術で実現したい未来社会を想像しながら、学びへの高い意欲と志を持って進路選択してほしいと思います。
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