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生レポート!大学教授の声

 

地球、水と空気。そして機械工学

 
2010年2月1日
筑波技術大学 産業技術学部
岡田 昌章

地球、水と空気。そして機械工学

私たちの住んでいる「地球」は「水と空気」に恵まれた星です。私たちの生活は、「水と空気」無しには考えられません。日々空気を吸って、水を飲むことによって私たちの命が保たれているのです。少し意外に思うかもしれませんが、実は機械工学では、この「水と空気」についてたくさん学ぶことができます。「機械」は私たちの生活のパートナーであって、「機械」もまた「水と空気」に依存して成り立っているからです。ですから、機械工学を学ぶことは、私たちの生活や私たちを取り巻く地球環境の問題についても学ぶことになります。

いくつか例をあげますと、私たちの生活に欠かせない電気エネルギーの多くは水(水蒸気)の性質を利用してつくられています。そこでは、蒸気タービン(※)という機械が活躍しています。また、新幹線のあの魅力的な形も、車体の周りの空気の流れを計算してつくられているのです。水蒸気の性質については「熱工学」で、水や空気の流れについては「流体工学」で学びます。そして、地球の気候もまた、地球を取り巻く水と空気の性質に大きく依存しています。地球温暖化の計算も、「熱工学」と「流体工学」で学ぶ知識を基本に行われています。

※蒸気タービン・・・
 燃料をボイラーで燃やすなどして作られた蒸気でタービン(羽根車)を回し運動エネルギーへ変換する原動機

私たち人間を初め、地球上に存在するあらゆるものが水と空気の中で運動しています。少し面白い例をあげれば、球技スポーツで用いるボールの運動があります。野球、サッカー、卓球などでみられる多彩な変化球を思い出してください。これらの変化球がどれほど競技を面白くしているでしょうか。実は、高校で学ぶ物理学では、空気の影響を無視して物体の運動を計算しています。ですが、実際のボールは空気の中で運動します。ボールの回転やボールの表面にあるわずかな形状の変化によって、空気の流れがさまざまに変わり、それによってさまざまな変化球が生まれるのです。空気の存在しない宇宙空間ではプロ野球の投手でも変化球を投げることができません。この変化球の運動について真剣に研究されている大学教授もいます。水泳競技は体の周りの水の流れに依存しており、そこで水着開発の競争が話題になったことは記憶に新しいと思います。

コンピュータでつくるバーチャルな世界や宇宙という未来の夢の世界だけではなく、地球という素晴らしい星の上で成り立っている現実の世界に興味を持って工学部で学ぶ学生が増えてくれることに期待しています。地球の明るい未来を築くために。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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