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生レポート!大学教授の声

持続可能な脱炭素社会を実現するために

2024年6月28日
新潟大学工学部
材料科学プロブラム
八木政行
持続可能な脱炭素社会を実現するために

 地球温暖化による気候変動や生態系の変異、化石燃料の枯渇、環境汚染、地球規模での環境・エネルギー問題が深刻化しており、気温上昇や大雨・大雪による自然災害の頻発化など、気候変動の影響が顕在化してきています。近年の地球温暖化は、石油や石炭などの化石燃料の使用による二酸化炭素濃度の増大が原因といわれています。我々の身の回りの物のほとんどは、化石燃料なしでは生産できないといっても過言ではありません。皆さんが毎日食べているお米や野菜も例外ではありません。米や野菜を作るには肥料が必要です。その肥料の多くは、肥料工場で化石燃料をたくさん使用して製造されています。稲刈りも農業用機械を使用し、石油がないと農業用機械は使えず、稲刈りは大変になります。化石燃料を使用する際には、必ず二酸化炭素を排出してしまいますので、化石燃料を使用しないで、現在の私たちの生活が無理なく営めるような新しい社会を築く必要があります。それが脱炭素社会です。脱炭素社会を実現するためには、主要なエネルギー源を化石燃料から、水素のように二酸化炭素を排出しないで使用できる燃料に代えていかなければなりません。

 しかし、脱炭素社会を実現するのは、そう簡単ではありません。それは、水素を製造するコストが高いからです。工場で製品を製造するとき、なるべく低コストのエネルギーを使用した方が、製品が安くなり、消費者は嬉しいかぎりです。低コストで水素を製造することが、脱炭素社会実現の鍵になります。現在、低コストで水素を製造できるように、世界中の多くの研究者がたゆみない努力を続けています。

 大学で講義をしていると、最近の学生が環境問題に大変敏感なことに気づかされます。今の大学生は、生まれた時から環境問題が取り沙汰され、立派な環境教育の中で育ってきたからだと思います。スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(2003年生まれ)のような環境活動家が現れたのも驚くことではないと思います。高校生の皆さんは、我々大人の世代とは違った、経済性よりも重く環境問題を考えられる世代です。皆さんたちの世代で、脱炭素社会の実現が加速するものと大変期待しています。頑張ってください。私の研究グループでは、太陽光エネルギーによる化学燃料や化学製品を製造する、人工光合成に関する研究を行い(上図参照)、脱炭素社会の実現に貢献したい思っています。

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