2022年1月21日
四国地区
香川大学 創造工学部
建築・都市環境コース
近年、地球温暖化に対する考え方や行動は大きく変化しています。各国は2050年にカーボンニュートラルを目指すため様々な施策に取り組み始めました。また、2021年8月にIPCCが公表した報告書では、地球温暖化は「疑う余地がない」ものと明記され、大幅な温室効果ガスの削減ができない限り21世紀中に1.5度から2度を超えるだろうという警鐘も鳴らされています。地球温暖化問題以外でも、枯渇資源の過度な利用や人間中心主義的な土地利用など多くの環境問題が山積しています。こうした環境問題は人間のライフスパンから見れば不可逆なものである場合が多く、持続可能な社会を実現するためには喫急の対策が必要不可欠です。ここでは、持続可能な社会の実現に向けた資源利用に関する研究を紹介します。
我々は多くの資源やエネルギーを消費することで社会生活を営んでいます。基本的には資源・エネルギーの消費が多くなればその分生産が可能となり、GDPの成長が見込まれます。しかし、大気へと放出される温室効果ガスの量もそれに比例して増加することが予想されるでしょう。温室効果ガスの放出は地球温暖化を加速させ、我々の生活に自然災害・食糧や水の不足・生態系の悪化といった様々な形で影響を及ぼします。したがって、経済活動と利用する資源・エネルギーのバランスを見極める必要があります。このような分析を行うモデルは総称してIntegrated Assessment Models (IAMs)と呼ばれ、「経済学」と「自然科学」の両方の主な機能を1つのフレームワークに落とし込んで分析するモデルとなります。このような分析方法によって、世界レベルでの長期的な目標がとらえやすくなります。
持続可能な社会に向けて資源・エネルギーの利用バランスを総合的に考えることに加え、限られた資源の中でどのような選択を行うべきか考えることも重要な課題となります。例えば、利用できる化石燃料に制限が生じれば、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用が不可欠になります。もちろん、発電費用や発電容量などから将来的な利用率を予測することは可能ですが、単純に効率よく発電できる場所に施設建設ができるわけではありません。付近の住民の意向や生態系への影響、景観問題等様々な要因を考慮する必要があります。特に、これらの施設はNIMBY(Not In My Back-Yard)施設と呼ばれ、社会的必要だという意識がありながらも自宅の近所に建設されることが拒まれる施設であると考えられています。つまり、住民に十分な理解が得られなければ、様々な対立を加速させてしまう可能性があります。そこで、人々がどのような考えを持っているのか解明することが重要になります。人によって景観の価値や生態系の価値は大きく異なりますが、アンケートを上手く設計して調査を行うことでそれらの価値を推計することができます。アンケートによって得られた結果は、どのような条件であれば住民に受け入れてもらえるのか、どのような政策を実行することが望まれるのか、といった議論を進めるうえでも重要な資料となるでしょう。
持続可能な社会を実現するためには、人々の経済活動と自然環境・生態系を共存させる必要があります。マクロな視点において資源・エネルギーの利用バランスを探ることだけでなく、効率的な資源利用方法を提案することも重要な課題の一つです。特に、香川大学のある瀬戸内地域は豊かな自然環境・生態系が広がっています。瀬戸内海は単に漁業資源を提供するだけでなく、観光資源としての価値や多種多様な生物の生息場としての価値がありますが、利用できる資源には限りがあります。どの程度の資源利用レベルが望ましいのか、利用可能な資源量の中でいかに効率的な生産を行うか、課題はまだまだ沢山あります。
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私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |