「フロンティア工学類」こんな一風変わった名称の学類を、本学理工学域では一昨年4月に新設しました。この学類は、日々進歩する、そして絶えず進化する先端技術をいち早く身に付け、近未来社会が必要とする技術革新を工学系異分野の融合や統合によって実現する、正に技術の未踏領域を切り拓くエンジニアや研究者の養成を目的としています。本学類での教育研究は、機械工学、化学工学、電子情報工学を専門とする教員が担当し、その研究分野は、ロボティクス、自動運転、メカトロニクス、ナノテクノロジー、高機能材料、情報技術、計測制御など多岐にわたっています。
さて、皆さんは「化学工学」って聞いたことがありますか。化学工学は、われわれの身の回りにあるさまざまな素材や有用物を原料物質から作る工業プロセスを扱う学問です。高品質な有用物を効率的に大量生産するためには、その製造プロセスにおいて、原料物質の輸送、混合、温度・圧力による化学反応の制御、生成物の分離・精製など、単位操作と呼ばれる一連の操作を最適な条件で行う必要があります。産業革命期の技術革新によりさまざまなモノが工業的に生産されるようになりましたが、当時の製造プロセスの設計や操作は技術者の経験と勘に頼ることが多く、製品の品質も生産効率も良くなかったそうです。そこで、各単位操作で起こる物理的、化学的現象を正確に捉え、物質の状態変化と熱の出入りを整理して、これらを学問的に体系化した化学工学が登場しました。19世紀から20世紀にかけて確立された石炭のガス燃料化、合成繊維や合成ゴムの製造、石油精製、アンモニア合成、海水淡水化などの工業プロセスは化学工学の画期的な成果と言われています。現在は、多品種少量生産の医薬品・化粧品分野、二次電池や燃料電池などのエネルギー分野、廃棄物処理などの環境分野、新規材料の創製に不可欠なナノテクノロジー分野等、化学工学技術者や研究者の活躍の場が拡がっています。私は、化学反応や吸着現象を利用して熱エネルギーと化学物質エネルギーを相互変換する化学蓄熱材の開発研究を行っていますが、ここでも反応の進行と熱のやりとりを理解することが重要で、化学工学の知識は非常に役に立っています。若い皆さんにも、是非、化学工学に興味を持ってもらい近未来社会を支える技術開発の先頭に立ってもらいたいと思います。
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