私は、授業のなかで必ず1回は現場見学として学生を現場に連れて行くようにしています。それは授業中にいくら言葉で説明してもイメージを掴んでもらえないからです。しかし、現場に連れて行き、実際の構造物を見てもらうことにより、すぐに理解してもらえます。まさに、「百聞は一見に如かず」です。
2014年から橋梁、トンネルなどの構造物は、5年に1回の近接目視による点検を義務付けられました。構造物は様々な要因で劣化や損傷するため、5年に1回はしっかりと構造物を間近で点検し、診断しようと決めたのです。誰でも簡単に点検や診断ができるわけではなく、経験が必要です。例えば、雨が降っている時や雨が降った後、現場に行くことで劣化の要因を突き止めることができる場合があります。雨水がコンクリート構造物の劣化に関係していることもあるからです。これも経験です。何度も足を運んで実構造物を見ることが必要なのです。我々は、実構造物を見るだけでなく、様々な試験や計測を現場で行うことにより、構造物の劣化状態を診断しています。
近年では、現場に何度も行くことができない人に対して、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使い、点検技術者の教育を行っているところもあります。VRの場合は、現場に居るかのような体験に加えて、熟練者から教えを受けることができ、様々な経験を積むことができます。まさに現在のIT技術を駆使したアイデアであると思います。
人々は、色々な経験を積むことにより、想定外のことが起きても乗り越えることができます。色々な経験を積むことができる場所は、やはり現場しかないと思います。みなさんも現場に足を運んで本物の構造物をよく見てください。そして、たくさんの経験を積むことで立派な技術者になってください。
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