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生レポート!大学教授の声

自分の目で見て、自分で考える力をつける

2019年2月15日
神戸大学 大学院工学研究科
南 秀人

 高分子、ポリマーなどの言葉を耳にする機会が多くあるかと思います。それらは化学の授業で最初の方に習う水や二酸化炭素などの分子とは違い、そのような小さな分子が共有結合で繋がった分子量の大きい物質です。それら高分子は、軽量で加工しやすく、耐腐食性にも優れるなどの特徴から繊維やプラスチックとして使用され、身の回りの文房具、衣服、食品パッケージなど様々な製品に使用されており、今や無くてはならない材料です。私の研究グループではその高分子を小さな粒子にして機能を持たせる研究を行っています。

 高分子微粒子は、ナノからマイクロメートという非常に小さな粒子です。通常、高分子微粒子は界面張力の働きから、まん丸な真球状の粒子しか得ることができませんが、合成方法を色々工夫することにより、内部に空隙を持たせたり、真球状でない粒子も合成可能であり、マイクロカプセルや固定化担体として生医学分野や化粧品分野での応用が期待されており、また光拡散剤などとして情報分野などにおいても機能性材料として応用されています。この様な高分子微粒子は、直接眼には見ることができませんが、非常に重要な働きをしており、社会に役に立つ材料を生み出すべく日々研究に打ち込んでいます。

 皆さんは大学に入るまでは、解答のある問題を解くために勉強するかと思いますが、これから大学で行っていく研究は、答えがありません。そのスタイルの違いに戸惑うかもしれませんが、自分で出したデータを見て、考えて、答えを見つけること、さらには、その答えを見つける方法を身につけることが大学での大切な勉強になります。

 最近では、マイクロプラスチックや海洋プラスチック問題などが取り上げられています。しかしプラスチック自体は無毒であり、食品包装や衛生面などにおいても生活や疫病から守る重要な役割をしています。もしプラスチックを無くすと年間何百万人の人が飢餓に陥るともいわれています。もちろん自然に優しいプラスチックについても開発が進んでいます。もしかしたらこの問題は、プラスチック自体ではなく、社会システムや人のモラルの問題かもしれません。自分で見て自分で考えてみて下さい。

 化学から出た問題は化学で解決するのが一番かもしれません。今、疑問を持っていること、興味のあることの答えを見つけに来てみませんか?

図2 マッターホルン山頂からの眺め(スイス)
図3 世界大会懇親サッカー大会(ベルリン)筆者は最前列左端
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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