いま皆さんが学んでいる高校の教育が変わりつつあることと思います。それは、大学入試が変わるために、変わらざるをえないからです。この変化は最終的には大学教育まで変えることを視野に入れた教育改革の一部です。「知識偏重型の教育を変える」というのが、この改革の目的です。つまり、高校で「三つの学力」を身につけた生徒を受け入れて、主体的に学び、自ら課題を発見し、創造的な解を見出す能力を身につけてもらうのが、これからの大学教育に求められます。
ところで、「主体的な学び」とは何でしょうか。昔の大学の先生は、基本的なことは教えてくれませんでした。自分で勉強しないと何もわからないままですので、仕方なく自分で参考書を探して、足りないところを理解して、でもやはり試験でひどい目にあって、、、学部3年までは、答えのある課題・実験でしたので、いざとなれば友人に助けてもらったものですが、この状況は4年生になったら一変しました。卒業研究では、世界で誰も取り組んでいないことに取り組みます。それまでレポートや課題の答えを教えてくれていた友人は、皆、別の研究室で別の研究を始めます。ほんの少しでしたが、自己流で道を切り開いてきた経験がここで役立ちました。自己流だから間違っていることが多く、やはり知識も足りず、先生とのディスカッションのたびにどやされていましたが、なんとか前に進むことができました。少しずつ課題を解決し、研究を進め、学位をとって卒業したわけですが、振り返れば、これが「主体的に学び、自ら課題を発見し、創造的な解を見出す能力を身につける」一番の方法ではなかったか、と思います。
私は、現在、一年生の基礎化学で、「動画で講義内容を予習し、教室では演習に取り組む反転授業」をしています。課題は与えられるとしても、その解決に何が足りないのか自分で調べて、考えて、解決する、、、卒業研究の疑似体験がその狙いです。今度の教育改革のなかで、このような講義が増えていくのか、今は見通せない状況です。いずれにしても、これから大学に進学する皆さんに一つアドバイスがあります。大学に入ったら、何から何まで教えてもらう、という態度には、早く見切りをつけることです。昔は時間をかけて、だんだんに「自分で学ぶ姿勢」を身につけていったわけですが、これからは悠長なことはいっていられません。それが「未来の教室」で学ぶのに、一番必要な心構えだと思います。
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