2023年11月10日
中国地区
山口大学工学部循環環境工学科
准教授 山本 豪紀
皆さんは、自分の部屋をきれいにしようとするときに、一度“汚してからきれいにしよう”と思いますか?あるいは、きれいな状態で維持しようとするとき、どんなことに気をつけますか?先ず汚さないようにと考えませんか?その、部屋を地球に置き換えて考える環境に対する取り組みもあります。もちろん、汚れてしまった環境が存在することを鑑みると、それをきれいにする取り組み(浄化技術)は非常に大事であることに疑う余地はありません。でも、それと同時に(あるいはそれ以前に)先ず地球(環境を)汚さないことを考えませんか?私たちは、多くの化学物質(あるいは材料)に囲まれて生活をしています。過去の暮らしに戻るのでなければ、それらの化学物質は今後も必要になるでしょう。それらの化学物質をより効率的に生産するための研究を行っています。身近な材料・物質であるほど、製造量も多くなりがちですから、それを製造する際に環境に与える影響も大きくなります。例えば、世界中で年間 400 万t 以上も製造されているある物質を製造する際には製造過程で、製品1トンあたり1.6~4.4トンもの目的外の物質(いわゆる“ゴミ”)が副生されてしまいます。
その製造法を改良して、目的の物質を効率良く製造するための方法を開発することは従来法が抱える膨大な資源やエネルギーの無駄をなくし、環境を悪くしないという環境問題への取り組みとなります。このように、事業化されている物質の製造プロセスにおいても、環境を悪くする可能性のある“効率があまり良くない方法”が残されています。そのような物質の製造方法の改善という課題に実際に企業の方と共同で取り組んでいます。環境問題に取り組もうとしたときに、しばしば“コスト”が問題になりますが、製造効率を高くしてゴミを減らすというアプローチの場合には、収益向上につながりますから、導入されやすくなると考えています。但し、その対象にはいろいろな事情があることも考えて、多くの解決方法(メニュー)を提示して、適切に選択していただくことを心がけたいと思っています。
現実問題として、身の回りの多くの材料が有機化合物であるために、課題解決には有機化学の“チカラ”を借ります。ところで、潜在する課題は製造過程にのみ存在するわけではありません。製造後の輸送、貯蔵等で製品が劣化してしまうとゴミを発生します。そこで、製品劣化を防ぐ方法の開発や、環境を悪化させる副産物の発生メカニズムの解明やその防止法の提案等も行います。総じて工学部ということもあり、企業と共同で研究開発を行うことが多く、また、そこで問題となっている課題を解決することにより、環境問題解決に貢献します。そこで、事業として実施されるということが、重要な研究開発の出口となります。従って、コストや産業財産権への配慮も欠くことはできません。
我々が取り扱ったほとんどは有機化合物です。その特徴の一つに“燃える”ということがありますが、有機化合物を使った新しい取り組みとしてこちらもご覧ください。
我々の名称は記載されていませんが、表中最上段の連携消防機関等が「泉大津市消防本部」の項目(内容)が、我々が関与している内容です。
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