(令和7年2月18日版(記事に誤りなどお気づきの点がございましたら、善処改善に努めますので、ご指摘いただけると幸いです。)
今回は、みんな大好き文房具のお話です!皆さんは、何色の蛍光ペンが好きですか?黄色かピンク色を選ぶ人が半数以上だという話もあります。私は緑も捨てがたいと思います。
蛍光ペンは目がチカチカするような色に見えます。なんだか、「色以上の色」が出ているような気がします。その鮮やかなひみつを、謎解いていきましょう!
おことわり:(難しければ、まずは横に置いておいてください)
色の見え方についてもっと説明すると複雑になります。本文は分かりやすさを重視し、語弊がある箇所は※印をつけて<発展>で解説しています。主に、当たった光に照らされて見える際の原理(減法混色、補色を考慮)と、それ自身が出す光の色がそのまま見える際の原理(加法混色)との違いに関連しています。別の機会があれば詳しくお話しします。
・・・というのは本当でしょうか?実験で確かめてみましょう。マーカーした場所に当てる光の種類(色)を変えて観察します。
色々な色、シリーズのものがあるといいですね。
こちらも色々な色があれば楽しそうです。ペンライトの光を文房具屋か100均で売っているセロハン色紙で覆う方法が一番お手軽です。一枚ごとの色は薄いので、折るなどして同じ色を沢山重ねてみましょう。単色LED(赤、緑、青など)のライトがあれば、もっと良いです。高いけど。UVライトかブラックライトも用意しましょう。光で固まる接着剤のオマケでついているライト、レジンクラフト(樹脂を光で固めるアート)、ネイルで使うライトがそれです。手芸屋さんか、100均にも売っていることがあります。よりしっかりしたブラックライトは、数千円程度で手に入ります。○○nmという数字があったら、なるべく小さなものを選びましょう。UVライトとブラックライトは特に目と体に良くないので、充分に注意してください。
蛍光染料を使っていないものを。よく分からなければ、ペン色の見分けはつくけれど、ブラックライトを当てるとなるべく暗く見えるものにしましょう。普通の段ボールでも構いません。
紙に色々な蛍光ペンを引き・・・(シリーズによっては、色が不ぞろいです。ごめんなさい)
暗い場所で色々な光を当てます。
せっかくなので、色々やってみましょう。
シリーズAのペンがフリクションです。マーカーの左半分を柄でこすると色が消えますが・・・
ブラックライトを当てると、先程発色していた、だいだい、黄色、緑色だった所がまだ光っています。
ずっと発色しなかったシリーズAのピンク(上側)を、黄色(下側)と並べてブラックライトを当てます。
ピンクのペン先は暗く、胴体だけ発色しています。なんと、ペンのカバーとインクに違いがあることを発見!
カラーコピーを取ると、このように消える色(むしろ,元より白くなることも)が現れます。コピーのスキャン中に当たる強い白色光により、強く発色したものが白く写りました。
コピーしたものにブラックライトを当ててもコピー元のようには光りません。
これらは偽造防止技術にも応用されているものです。
以前、「太陽電池(光電池)は温度で性能が変わる!?」で説明したモデルを使っています。よろしければそちらの記事もご覧ください。
色の見え方は、光の種類で決まります。
光は、光子という粒の集まりとも言えます。光子1つ1つが光のエネルギーを持っています。その大きさを棒の長さで表現すると、以下のようになります。光の色により長さが異なり、虹と同じ順番に並んでいるのがわかります。
赤色は小さな、紫色はより大きなエネルギーを持つ光です。赤より短くなると赤外光、紫より長くなると紫外光となり、どちらも目に見えなくなります。人はなぜ色の区別ができるかというと、この範囲の光を見分けることで生き延びてきたからです。人間が見分けることのできる光を可視光といいます。
物の色が見えるのは、物から目に向けてこの光が飛んできているからです。全ての種類の可視光を束ねると、白い光(※1)になります。例えば白い光が赤い物に当たると、赤以外の光を吸収して赤色だけを反射するため、赤く見えます(※2)。←ちょっと複雑なので、目に浮かべながらゆっくり読んでください。これから難しくなってきたら、なんとか分かるかも知れない所まで読んで寝て、翌朝に読み返して進めてください。
いいでしょうか、話を発展させます。ということは、例えば青い光だけを当てると、青い光を吸収するか反射するかのどちらかだけになり、青か黒かの単色の世界になります。例外が、次のお話です。
蛍光色素という特別なものを使うと、色を変換することができます。光を決まった大きさに切りそろえるはたらきがあります。蛍光現象と呼びます。
図の例だと、より大きなエネルギーを持つ光は緑色に切りそろえられます(※3)。普通は元の光に含まれている以上の強さにはなりませんが、この場合は新しく同じ色が生み出されるのです。これが蛍光ペンから「色以上の色」が出ている気がする理由です。切りそろえる長さ(色)は、蛍光色素の種類によって変わります。
頭のいい人にはもう、実験結果の理由がわかったかも知れませんね。
蛍光色素に赤、緑色といった光を当てても、より大きなエネルギーを持つ青、紫色の光には変わりませんが、青、紫色の光を当てると、より小さなエネルギーの赤、緑色の光に変えられそうだとわかりました。また、当てた単色光とははっきり違う色の光が見えれば、蛍光現象による発色があったといえそうです。
発色があれば○、なければ×として実験結果をまとめました。
その他も含めてわかったことをまとめます。
今回ご紹介した他にも色々な蛍光ペンが売られています。皆さんも色々なパターンで実験してみましょう!
嫌にならない程度に読んでください。
※実際は、このように複雑な事情があります。今回の説明は厳密ではありません。
①蛍光色素が切りそろえて生じた色の発光
②ペンの持つ色によって吸収せずに反射した光
③当てた光がそのまま反射したもの
の合計となります(白色光以外の光を当てるとそれぞれが変化して色味が変わります)。先程の「色の変換」の説明からわかるように、①は当てた光未満の光エネルギーの色となります。実験の通り、緑色の光を当てても青い光にはならず、赤い光を当てても緑、黄色の光は出てきません。②は当てた光(②-1)と①で生じた光(②-2)の反射です。①と同じく、その中に元より大きな光エネルギーの色が含まれていることはありません。反対に、ピンク、黄色といったペン色は、①と②-2により、当てた光より多い光量となって、鮮やかに見えるのです。
質の良いブラックライトの光は、暗がりにすれば、普段見えない汚れを見つけるのに役立ちます。トイレとか。ネコを飼っている人なんかは便利ですよ。せっかくの高い買い物です、二度おいしく使いましょう!白い洗剤、お札、ちょうちょ、宝石に当ててみても楽しいかも知れませんよ!特にお札は今なら新旧併せて6種類手に入ります。私が試した中では、405nmと表示のあった手芸用ライトではよく見えませんでしたが、365-375nmとあったものでは鮮やかな変化を楽しむことができました。
掲載大学 学部 |
神戸大学 工学部 | 神戸大学 工学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |