ちゃんと勉強しているの? 宿題は!?
・・と、おうちの方によく言われていませんか?皆さんの今やっている勉強は、教科書などを使って決められたカリキュラムに沿って行われています。「あれ、ヘンだな?」と疑問を持っても、振り返って考え直す余地はほとんどありません。若くして相当の知識を求められている社会ではやむを得ないことですが、ここでつまらない、と歩みを止めてしまってはもったいないです。大学では、学問が皆さんを待っています。学問は、学んだ(勉強した)上で、真実をとことん問うものです。「あれ、ヘンだな?」をとことん突き詰めることができるので、いよいよ主体的に課題に取り組めるのです。具体例を挙げましょう。
問: 太陽でできたかげが動いているのはなぜでしょうか?(小3)
答: ○ 太陽が動いているから。
地球が回っているから、ではマルをもらえません。2問目です。
問: ソーラーカーの走りは、暑い日と寒い日では、ちがいがありますか?(小4)
答: ○ ない
本当は、ある、がマルです。なんと、同じ日差しの場合、寒い日の方が速くなるのです!
今回は、太陽電池の出力性能と温度の関係を実験で確かめてみましょう。
日当たりの良い平らな床に、ビニールテープを利用しながら数メートルの走行コースを作ります。
1台のソーラーカーを屋外に置き、温度計で気温を測定します。
もう1台のソーラーカーを冷蔵庫、冷凍庫もしくは保冷剤入りクーラーボックスに入れ、低温用温度計で庫内温度を測定します。
10分程度経過してソーラーカーの温度が安定したら、速やかに走行コースで競争し、ストップウォッチで計測します。太陽電池パネルの角度など、条件は揃えて下さい。併走が難しい場合は、順番に走らせてもいいですが、実験回数を増やして統計的に確かなものとして下さい。
太陽電池パネル温度の低いソーラーカー(左側)の方がより速い事が分かります。場合によっては、数十%の速度差が出る事もあります。
(補足)ソーラーカーの競争の代わりに、豆電球とソーラーカーの太陽電池パネル、電流計を直列につないで、同様に太陽電池パネルの温度を変えた実験を行っても良いです。
大まかな説明です。より厳密には最後の参考文献(大学の教科書レベルの難易度)をご覧下さい。
太陽からの光は、光子という粒の集まりとも表現できます。その光子1つ1つがそれぞれ光のエネルギーを持っていて、地球に降り注いでいます。その光エネルギーの大きさにはばらつきがあります(図では長さで表現しました)。
この光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置が太陽電池です。
太陽電池は半導体という性質の固体で出来ています。半導体には色々な種類があり、シリコン(ケイ素)、ゲルマニウムなどを原料としたものが有名です。
半導体の原子が集まって近づくと、お互いの影響によって光エネルギーを取り込むポケットのようなもの(バンドギャップ)が出来ます。原子同士が近づくほど影響が大きくなり、ポケットはより深く(取り込むエネルギーが大きく)なります。原子間の距離が異なる半導体では、ポケットの深さが異なっています。
こうして取り込んだ光エネルギーを巧みに電気エネルギーに変換するのが、太陽電池の仕組みです。
太陽からやってきた光子が太陽電池のポケットに飛び込むのですが、2つ重要な決まりがあります。
まず、光子のエネルギーは、ポケット1つに1個ずつしか入らないのです(電子1個を励起)。
そして、ポケットからはみ出た分のエネルギーは取り込めず、電気エネルギーに変換できません。ポケットより小さいエネルギーもまた、取り込めません(このモデルでは表せていない概念なので、注意して下さい)。
太陽電池の温度が上昇すると、半導体も原子が振動して膨張します。アルコール温度計の液が膨張して毛細管を昇ったり、電車の線路が真夏に長くなったりするのと同じ原理です。膨張すると原子間距離が大きくなります。ここで太陽電池の仕組みに立ち返ってみましょう。原子間距離が大きくなると、お互いの影響が小さくなってポケットが浅くなります。すると、同じ数だけ光子がやって来ても、取り込むエネルギーの合計が小さくなってしまいます。温度が上昇すると、太陽電池の発電性能が下がってしまうのです。
温度上昇による影響は他にもあり、それらが混ざり合って実際の性能となります。例えば温度が高くなると、ポケットに入ったエネルギーを電気エネルギーに変換する前にこぼしてしまったりします(電子-正孔対の再結合数の増加)。
現実の世界でも温度による影響は存在し、特に集光して発電する太陽電池で問題になったり、モンゴルのような寒冷地で性能が向上したりしています。
太陽電池のポケットの深さが電圧に、電気エネルギーに変換したポケット内の光子の数が電流に相当します。従って、これらの掛け合わせが電力となります。ポケットを深くすると電圧が高くなりますが、ポケットより小さく利用出来ない光子が増えて電流が減ります。ポケットを浅くすると、沢山の小さな光子が利用出来て電流が大きくなりますが、電圧が低くなります。バランスが重要ですが、幸運な事に太陽からの光子エネルギーは、半導体のポケットの深さに近いため、太陽光発電が成立しているのです。
太陽電池内部で起こっている様子を詳しく知りたい場合は、「pn接合」「バンド図」などでweb検索してみて下さい。
太陽からの光エネルギーを何%電気エネルギーとして取り出せるかを、エネルギーの変換効率といいます。上の例では、太陽からの光エネルギーを切りそろえた残りの切れ端は、利用できずに捨てられているのが現状です。現在、世界中で変換効率向上のための研究がなされています。皆さんが大学で「学問」に触れ、「学問」を通じ、様々な問題に取り組み、社会に役立つ立派な方になられる事を願っています。
喜多隆著(平成24年出版)「太陽電池の変換効率」 コロナ社
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