地盤工学では、砂をまきこぼしたときにとることができる最大の角度を安息角といいます。この角度は、理論的には緩く詰まった砂1)の低い圧力状態での『せん断抵抗角』と呼ばれる砂の強さと等しい2)とされており、角度が高いほど強い砂といえます。土木工事等で利用される土の強さは、数百万円するような高価な機械を使って求められますが、安息角は、砂と計測機器があれば比較的簡易に求めることができます。
砂を天日干しします3)。
厚紙でろうとを作ります。
段ボールが折り曲がらない様に気を付けながら、円形に切ります。これが天板になります。天板の大きさは任意の大きさです。次に、天板と柱を作ります。下の図では組み立てた段ボール箱に穴を空け、そこに柱突き刺して天板と底板を接着していますが、底板は天板より大きく、柱は天板の直径より小さく、用意した砂で埋まらない程度の高さであれば、形はどのようなものでも構いません。また、この試験台は、天板と底板との隙間を確保するため(こぼれ落ちた砂で砂山の端が分からなくなることを防ぐため)に設けたものなので、天板をしっかりと支えられて隙間を確保できればどのようなものでも構いません。この時、天板が水平になるように注意します。
ろうとを天板の中心に立てて手で支えながら砂をろうとの中に入れます。砂がろうとの外にこぼれない様に注意しましょう。入れる量は、用意した天板の大きさによってできる砂山の高さが変わるので、実際に入れてみて調整します。
砂を入れ終わったら、ろうとをまっすぐ上に引き上げて砂山を作ります。
砂山を作り終わったら、砂山を真横から撮影します。撮影した写真を印刷あるいはパソコン上に用意し、分度器で砂山の端から砂山の一番高いところまでの角度を測ります。画像上には砂山の端が2か所あるはずなので、2つの角度を測って平均値を求めましょう。
安息角は静電気や湿度などの影響を受けるので、何度か同じ条件で砂山を作って安息角の平均値を求めます。
ひとつの条件で安息角を求め終わったら、砂の種類を変えて砂山を作って角度を比べてみよう。
使った砂を観察し、どのような特徴を持つ砂が安息角が高くなるか考えてみよう。(形?大きさ?色?どの様な特徴があるか観察してみよう)
天板の大きさや砂山を作る時のろうとを引き上げる速さを変えるなど、他の条件を変えるとどうなるか、試してみましょう。
今回の実験では、砂が持つ強さのうち、安息角(せん断という力に抵抗する強さ)に着目しました。この様な砂の強さは土質力学や地盤工学という学問で取り扱われます。土質力学や地盤工学ではその他にも地盤の沈下や土の中の水の動きを理解することも行われています。この実験に挑戦してみた人は、砂の種類が違うと砂山の角度が変化することを実際に体験できたと思いますが、この砂の種類が違うことによる影響は地盤の沈下や土の中の水の動きにも表れます。
昨今とりあげられることが増えている土砂災害を防ぐためには、砂(土)の特性を知ることが非常に重要になります。この実験を通して、土に関する学問に興味を持ってもらえると幸いです。
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