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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

抗菌作用を見てみよう!

2021年3月19日
和歌山大学 システム工学部

はじめに

 菌の繁殖を抑え、キズ薬やニキビ薬としても用いられる抗菌物質は、生活に欠かせないものになっています。このような抗菌作用を持つ物質は、実は身近なところにも存在しています。今回は、食品の中に含まれる抗菌物質について、実験的にその存在を確かめてみましょう。

用意するもの

図1実験に用いた材料図1 実験に用いた材料

培地調整

  • 寒天 3.5g
  • チキンコンソメ(顆粒)小さじ1
  • グラニュー糖(スティックシュガー 3 g)
  • 耐熱ガラス容器(電子レンジにかけられるもの)

菌液調整

  • 耐熱ガラス容器(マグカップでも良い)
  • 納豆 1パック(今回はひきわりを使用)
  • 水100mL
  • 綿棒(個包装のもの)

培養

  • ペットボトル(350mL、2本)
  • 保温容器(発泡スチロールの箱など)

抗菌物質

  • オロナイン軟膏
  • アルコール除菌ゲル(手指消毒用)
  • チューブ入りおろしショウガ
  • チューブ入りおろしニンニク
  • チューブ入りおろしワサビ

実験

図2 実験の様子

培地の調整

  • 寒天(3.5 gくらい)・チキンコンソメ(小さじ1くらい)・グラニュー糖(3 g)を耐熱容器に入れる。(図2A)
  • 水200 mL程度を加え(図2B)、ラップを被せ、電子レンジで加熱する。(500 W、5分くらい)【注意!】吹きこぼれないように30秒ずつ、完全に溶けるまで加熱する。
  • 50℃くらい(手で触っても熱くない程度)まで冷ましたのち、タッパーに注ぎ込み、さらによく冷まして固める。(図2C)

納豆菌の播種

  • 水を入れ電子レンジで加熱・沸騰させ滅菌した耐熱容器(マグカップでも良い)を準備する。
  • 納豆 1パック(今回はひきわりを使用)を入れる。(図2D)
  • 水100 mLを加え、よく混ぜる。(上澄みを菌液として使用)(図2E)
  • 綿棒を菌液で浸し、寒天培地に塗布する。

抗菌物質の埋設

  • ストローを寒天培地に突き刺し、穴を開ける。(図2F)
  • 開けた穴に抗菌物質を入れる。(穴が埋まるように、斜めに切ったストローなどを使って上手く穴に入れる)(図3A)

図3 培養前後の寒天培地

  1. なし
  2. オロナイン軟膏
  3. アルコールゲル
  4. ショウガ
  5. ニンニク
  6. ワサビ

培養

  • お湯を入れたペットボトル(350 mL、2本)を準備する。(手で持てるくらいの温度)
  • 保温容器(発泡スチロールの箱など)に、お湯の入ったペットボトル2本と、フタをした寒天培地(納豆菌を塗布し、抗菌物質を入れたもの)を入れ、フタをし、放置する。

観察

  • フタを開け写真を撮る。(図3B)
  • 納豆菌の増殖が抑制されている阻止円の直径を物差しで測り、比べてみる。

解説

図4培養前後の寒天培地(拡大図)図4 培養前後の寒天培地(拡大図)
図5キズ薬や除菌ゲル、食品に含まれる抗菌物質図5 キズ薬や除菌ゲル、食品に含まれる抗菌物質

 納豆菌液を一様に塗布できていれば、寒天培地表面に白く菌が成長しているはずです。穴を開け、抗菌物質を入れた部分の周辺は、その抗菌物質の効力に応じて、菌の成長が抑制されているはずです(図4)。今回行った実験では、アルコール除菌ゲル > オロナイン軟膏 > おろしショウガ ≈ おろしワサビ > おろしニンニク の順に、大きな阻止円がえられました(図4)。納豆菌に対する抗菌作用はこの順番に強いものと考えられます。図5に示す通り、アルコール除菌ゲルには塩化ベンゼトニウムが、オロナイン軟膏にはクロルヘキシジングルコン酸塩が抗菌成分として処方されています。また、ニンニクにはアリシンが、ショウガにはシンジオールが、ワサビにはアリルイソチオシアネートが抗菌成分として含まれることがわかっています(図5)。これらの抗菌物質が菌の成長に及ぼす抑制効果(=抗菌作用)が反映されたものと考えられます。

最後に

 市販の擦り傷用の消毒液(マキロンなど)や、焼酎(江戸時代には消毒薬として使われた)、梅干なんかを試してみても面白いかもしれません。

参考資料

菊池 賢、感染症四方山話(9): 家庭でできる微生物実験 その2 THE CHEMICAL TIMES 2014, 3, 18–23.

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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