古来から島根県奥出雲の斐伊川上流で良質の砂鉄が産出され、それを原料に製鉄が行われてきました。現在も「たたら製鉄」としてその伝統は引き継がれ、日本刀や高級包丁の原料として供給されています。たたら製鉄では、たたら炉の中で砂鉄を木炭で約1週間かけて還元し、炭素を1~1.5%含有する良質の玉鋼を得ています。
一方、近代製鉄では、ブラジルやオーストラリアなどから良質の鉄鉱石を輸入し、溶鉱炉でコークスやコークスから生成したCOと反応することで還元して鉄を生成しています。たたら製鉄も近代製鉄もいずれもコークスによる鉄酸化物の還元反応を利用して鉄を得ており、原理は全く同じです。
逆に、鉄の反応性については高校の教科書でもあまり学ぶチャンスがありませんが、鉄は本来高い反応性をもち、空気中では速やかに酸化します。鋼材表面でも鉄の酸化反応は起こり、さびが生成します。鉄の酸化反応、つまりさびの生成は非常に身近な現象なのです。
ここでは身近な材料を使って鉄の性質を調べてみましょう。
薬さじ一杯の鉄粉(0.5gくらい)を薬包紙で包んで、こよりにする。
こよりの端をピンセットでつまんで、ガスバーナーで火をつける。
鉄は酸化により大きなエネルギーが発生します。鉄粉は表面積が大きいため、高い反応性があります。 市販の線香花火は、硝酸カリウム、炭素、イオウを混合し、さらに火花の原料として鉄粉を加えて作っています。
試験管にシュウ酸鉄2水和物を 1.0 g 加える。
シュウ酸鉄は加熱すると以下のように分解します。
Fe(COOH)2・2H2O→Fe(COOH)2 + 2H2O
Fe(COOH)2 →Fe + 2CO2 + H2
るつぼに酸化鉄粒子 0.5 g と活性炭 0.5 g を加え、十分に混合する。
るつぼに蓋をして、電気炉を用い、1000°Cで 2 時間、加熱する。
室温まで冷却後、内容物を試料瓶に入れ、磁石を近づけてみる。
酸化鉄粒子を活性炭(炭素)および活性炭から発生した一酸化炭素COで還元します。
この還元反応の原理は近代製鉄およびたたら製鉄と同じです。
2C + O2 → 2CO
FeOOH+C+CO →→→ Fe+CO2 +H2O
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