誕生日カードのように開くと、しかけられたギミックによって動きが生じるカード(ポップアップカード)には色々なバリエーションがあります。ここでは、上図のポップアップスピナーと呼ばれるカードを作ってみましょう。これは、水平方向に回転の軸をもち、上下にとがった羽が回転するという動きをします。このポップアップスピナーという名前をつけたのは西原明さんです。1970年代にはもうあったらしいのですが、最初に誰が考案したのかということは、はっきりとはしていないようです。
羽の形をアレンジする場合は、カッター、コンパス、曲線定規を使うのもいいでしょう。
紙を用意する。
中央の (図2の緑線)で半分に折る。逆方向にも折っておくと後の作業がやり易い。
右側が折り目になるように置く。
直角二等辺三角形を描く。
上側の辺の途中に印をつける。印の位置の目安は二等辺三角形の頂角からの幅が自分の人差し指の横幅くらいになるように。
その印から、図のように直線を引く。
今描いた線の途中に印をつける。前の幅と同じ幅で。
同じような手順をくり返す。
これを続けるとこんな風に中央にジグザクができる。
このジグザクに色をつける。
色をつけた線以外をはさみで切る。折りたたまれて重なっている後ろの紙も同時に切る。
裏返して、表と同じ色になるように色つきのジグザグをかく。
広げると、ポップアップスピナーの型紙が出来上がり。
羽がねじれないような、羽の先の折り方を選びながら、羽の根元にある緑と赤の線のジグザグを図14のように谷折りと山折りになるようにつまんで、折りぐせをつける。そうすると、それだけで図15のようになる。
図16のように閉じるために、先ほどの折りぐせに従って、今度はしっかりと折り、たたんだカードの平坦な状態へと羽をたたんでゆく。一番外側の大きな羽から始めて順に内側の羽を折りたたむ。そのとき、折りたたんでいる羽より内側にある羽は自然に回転して、折りたたまれてゆく。
出来上がったポップアップスピナーの羽が回転する様子を動画で見てみましょう。
羽がどのくらい回転するかは、型紙(図13)の中央に緑と赤で描かれていたジグザグの角度と羽の枚数によって決まります。図13の型紙では、ジグザグの角度は90度、羽の枚数は7枚です。また、上の動画では分かりにくいかもしれませんが、一番内側の羽は1回転以上2回転以下の回転をしているのが見て取れるでしょうか。もっと一般に、「ジグザグの角度θ、羽の数nをもつポップアップスピナーの一番内側の羽の回転角度は、nθである.」ことが示されます。さらに詳しく羽の動きを調べてみると、その動きはパラメータを用いて記述することができ、その軌道をコンピュータ上に描画することもできます。その結果から羽は一箇所に留まって回転しているのではなく、移動しながら回転していることが分かります。ジグザグの角度が144度のポップアップスピナーではこのことが良く分かります。動画をご覧ください。
H. Ei、 H. Hayashi and K. Komatsu、 Analysis of the motion of the pop-up spinner、Forma 31(2016) pp.1-5.
羽がどうして回るのかの説明のひとつとして「ポップアップスピナーの羽が回るのは、キャンディの包み紙と同じだから.」を提案します。キャンディの包み紙はワックスペーパーやセロファン等の材質の四角い紙であり、これでキャンディを巻くようにしてから、両端をねじって留めることで包装しています。ここで、真ん中に関して、両端のねじれが反転するようにします。言い換えれば、包み紙の両端を固定して、真ん中のキャンディが包まれている部分をねじっているわけです。この状態から、両端を左右に引っ張ることで、キャンディが包まれている部分が回転して、キャンディを取り出すことができます。ポップアップスピナーを実際に作ってみると、両端を固定して、羽の位置をねじってカードを平坦な状態にたたんでいることが分かります。
キャンディの包み紙から考察される原理は、ねじれ構造とその反転構造を合わせた構造は、そのねじれを解消しようとすると、ねじれ構造の合わせ目に回転が生じるというものでした。このことを確認するために、回転運動を生じる別の折り紙構造が作ってみましょう。らせん型円筒折り紙構造の型紙とそれを反転させたものを合わせて図17右のような型紙を描いてみました。この型紙は図17左の平行四辺形の基本ユニット及びその反転したものを並べたものです。
実際にこの型紙から折り紙構造を作ってみましょう。型紙をB4のコピー用紙に印刷します。まず、外枠の黒線で切り取ります。青線を山折り、赤線を谷折りに折り目をつけます。テンプレートの上側の灰色の部分がのりしろであり、下側と貼り合わせて円筒状にする。さっきつけた折り目に従って、折り畳んでゆくと完成します。できあがったものは図18のような折り紙構造です。
この両端を持って、外側に引いて伸ばしたり、逆に中央に向けて押して折り畳んだりすることで、中央部分に回転運動が生じます。動画をご覧ください。
K. Komatsu、 A. Hiraguchi and M. Morimoto、 Candy wrapping paper principle、 Scientific and Educational Reports of the Faculty of Science and Technology、 Kochi Univ.、 Vol.2 (2019)、 No.7
動画サイトYoutubeでは羽の形が円や星型であるようなポップアップスピナーを見ることができます。上で説明した型紙の描き方をアレンジすると、羽の形を変えることはそれほど難しくはないでしょう。ぜひ試してみてください。また上の回転する円筒状の折り紙構造を作る作業は難易度が高いです。さらにその労力に見合わず、その回転は効率なものではありません。中央の回転は1回転ほどです。卒業研究でゼミ生はこの折り紙構造を「スピニング折り紙シリンダー」という名称で調べて、色々試しましたが、回転を効率的にする画期的なアイデアはまだ見つかっていません。ぶんぶんゴマ(または、びゅんびゅんゴマ)という手作りおもちゃのようによく回るものができると楽しそうなのですが。
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