みなさんは、雨が降っているとき、歩道に水溜まりがあって歩きにくかった経験はありますか?しかし、雨水を透水できる舗装を使えば、集中豪雨のときでも快適に歩くことが可能になります。このような透水性の舗装は、ポーラスコンクリート(POC)という材料を用いて造ることができます。
ここでは、実際に空隙率が25%のPOC板を作って、水を流してみましょう。
以上、6号砕石、空隙率25%の場合のPOC作製について説明しましたが、5号砕石(大粒)と7号砕石(小粒)の場合は、以下を参考して下さい。
5号砕石、空隙率が25%の場合 砂利2255g、 セメント410g、 水115g
7号砕石、空隙率が25%の場合 砂利2130g、 セメント410g、 水165g
以下のようなPOC板が出来上がります。
透水容器の準備
プラスチックカップの底面にキリで穴を空けます。
降水実験
降水速度の確認(画像をクリックすると動画を再生します。)
プラスチックカップ(545mL)中に水を400mL(深さ100mm)入れて降水させ、流れ切るまでの時間を計測し、降水量を測定します。ここでは、降水時間は40sで、降水速度は9000mm/hでした。(参考:豪雨時の降雨強度はおおよそ100~150mm/h)
透水実験(画像をクリックすると動画を再生します。)
骨材径が異なる(すなわち空隙径が異なる)ポーラスコンクリートの上から水を流し、透水速度Vの違いを確認しましょう。骨材の粒径が大きくなるほど、透水速度Vが大きくなることがわかります。ビデオでは、6号砕石を用いたPOC板(高さH=215mm)の透水実験を紹介します。上から流れた水が底面に着く時を確認できるものをPOC板の下に置きます。ここでは、青色のタオルを置きました。
5号砕石、V = 36 mm/s
7号砕石、V = 24 mm/s
透水性コンクリートの代名詞といえるPOCは、内部に連続した空隙を有し、透水性、保水性、植生など多様な性能を設計できる特殊なコンクリートです。基本的にPOCは、環境負荷低減型と生物共生型に大別できます。図-1と図-2に、環境負荷低減型POCと生物共生型POCに期待できる各種の性能を列記します。写真-1にPOC舗装版の透水状況、写真-2に土壌を使わない屋上緑化を目指したPOC版による水耕栽培の実験例を示します。
近年は、POCの緑化性能を活用した都市・地域の景観の改善やPOCの透水・貯水性能を活用した都市・地域の豪雨対策など、より積極的な応用も提案されています。図-3は、POCを車道下および歩道に使用し、歩道下に有孔管を配置した場合の雨水の流れを概念的に示したものです。雨水は、車道下、歩道下を問わず、主にPOC内部を水平方向に流れることになります。図-4に表層の美観を工夫した複層POCの構成例を、写真-3に中学校構内に施工した複層POCの施工例を示します。
POCが英語で一般にPervious Concreteと命名されているように、POCの有する多くの性能の中でも透水性は極めて重要です。POCの透水性を端的に表す指標として、一般に透水係数kTが用いられます。POC内部を流れる水はかなり速く(レイノルズ数が高く)、POC内部の空隙構造も複雑であるため、乱流が生じて平均流速と動水勾配の関係が非線形関係となる場合も多いようです。以下に、線形関係式(1)、および代表的な非線形関係式(2)を記します。なお、空隙径と空隙率の大きな礫などの間を水が流れる場合(ほぼ乱流域にある場合)、mの値は約0.5となリます。
v = kT・i (1)
v = k’・im (2)
ここに、
i:動水勾配(=水位差(mm) /供試体長さ(mm))、
v:平均流速(cm/s)、
kT:透水係数(mm/s)、
k’:非線形透水指標(mm/s) (i =1のときk’=kT)、
m:非線形の透水挙動を累乗関数で近似した時の累乗指数(m =1のときk’=kT)
図-5に大学で行われたPOCの透水実験結果による透水指標と空隙率の関係を示します。POCの空隙率が大きいほど、また使用する骨材粒径が大きいほど非線形透水指標k'の値は大きくなり、透水性が増大します。また、POCがほとんど透水しなくなる空隙率はおおよそ13%です。
上記5.には、POCについて簡単に紹介しました。もっと詳しく勉強したい方は、以下の本で勉強できます。
透水性コンクリート(POC)の基礎と実践-環境共生型と豪雨対策を目指して-、
畑中重光(編集)、コンクリート新聞社、2019.8
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