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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

ふしぎな物質「水」の世界

2018年3月2日
東京農工大学 工学部

はじめに

 水は、私達の身近にある最もありふれた物質です。私達を含めて、地球上に生息しているほとんどの生物は、水なしでは生きていくことができません。ところで、科学の世界から見ると、水はありふれた物質でしょうか、ユニークな物質でしょうか。水の性質を調べていくと、他の液体物質と違うユニークな点が多々あります。今回は“ぬれる”という現象を中心に実験で確認していきましょう。

準備するもの

 ※以下のものは、ホームセンターや東急ハンズなどで手に入る。

  • コップ
  • 活性炭(粉末)
  • 中性洗剤
  • トールビーカー(又は長いコップ)
  • 小さなブラシ
  • 防水スプレー
  • 金属製 茶こし、あくとり
  • 試験管 φ10㎜、φ12 φ15㎜ (口の大きさの違う試験管)
  • 定規

実験

実験1 “ぬれる”か“ぬれない”か(1)

  1. トールビーカーに水を入れ、水の表面に活性炭を振りまきます。

  2. ①のトールビーカーに中性洗剤を数滴たらしてみましょう。

解説

 活性炭は水にぬれないので、①では水の表面に浮きます。これに目薬ビンなどに入れた中性洗剤(界面活性剤)を1~2滴垂らすと活性炭がぬれるので、すぐに沈むことが観察されます。

実験2 “ぬれる”か“ぬれない”か(2)

  1. ブラシに防水スプレーで薬剤をスプレーし、よく乾燥させておきます※注意1

  2. トールビーカーに水を入れ、小さなブラシをゆっくり水の表面に置きます。

  3. ②のブラシの横に中性洗剤を数滴たらしてみます。

解説

 小試験菅洗い用のブラシなどの針金部分を切り落とし、防水スプレーで防水しておきます。このブラシは防水作用のため、ぬれないので、表面張力は上向きに働きます。そのため静かに水の表面に置くと浮きます。ブラシの横の水面に中性洗剤を滴下すると、表面張力が小さくなるとともに、界面活性剤の作用でブラシがぬれてきます。そのため表面張力が下向きに働き、沈みます。

実験3 金網(茶こしやあく取り)で水をすくえるか

  1. 金網に防水スプレーで薬剤をスプレーし、よく乾燥させておきます。※注意1

  2. ①の茶こしやあく取りの金網に、ビーカーなどの水を金網の横から静かにゆっくり注ぎます。

  3. ②の金網の底を指で突っついてみましょう。

解説

 金網はぬれないので表面張力の力は上向きに働くため、水は落下しません。やや目の荒い金属網でも、注意してゆっくり水を注げばバランスが取れて水はこぼれません。しかし、金網の下部を突っつくとバランスが崩れ、水はこぼれ落下します。

※注意1:防水スプレーの薬剤を吸い込むと危険です。スプレーをするときは、マスクなどをしてベランダや外など換気のよい場所で行ってください。

実験4 試験管の水はどうなる

  1. φ10㎜の試験管に水を入れ、定規などでふたをして押さえ、逆さにして、定規を横にスーと引き抜きます。※注意2

  2. φ12㎜、φ15㎜の試験管など内径がやや大きいものでもチャレンジしてみましょう。

解説

 コップに水を入れ、はがきでフタをして倒立させ手を離すと、ハガキがコップに張りついて水はこぼれません。よく知られた実験ですが、「大気圧がハガキを押すので水がこぼれない」と理解されている場合があります。これは誤りで、ハガキは表面張力の作用で張りついているため水はこぼれません。この実験のように試験管の内径が小さければ、水の表面張力でバランスがとれ、ふたなどがなくても水は落下しません。実験3も同様な現象です。表面張力で支えているので、試験管の長さや水の量は関係なく、試験管の口の内径が関係します。

※注意2:定規など水にぬれにくいものでフタをして試験管を倒立させます。水を下に引っ張らないように注意して、スーと横に引き抜いてみましょう。内径が大きくなるとより難しくなります。

参考文献

  1. 佐々木恒孝:「身近な現象の化学 8ぬれる-固体と液体の出合いー」p143~166(培風館)
  2. 佐藤友久、化学と教育、49巻、174(2001)
  3. 佐藤友久:「(1)水に関する実験、(2)ぬれに関する実験」東京都高等学校理化教育研究会、研究発表集録、第41巻p24(平成13年度)
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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