皆さんの身近ある食べ物やジュース、絵画や染め物、化粧品など様々なものに色を付ける成分を着色剤といいます。着色剤には、水や油などの溶剤にとけて溶剤自体に直接色を付ける「染料」と、溶剤には溶けず、溶剤が乾いた後は着色剤が固まって残る「顔料」に分かれます。
その「顔料」の中でも、鉱物から作られた「無機顔料」と呼ばれる着色剤は大変古くから使われていました。これは染料に比べて耐久性があり、10年、100年どころか15000年前のラスコー洞窟の壁画にも使われた顔料は、現在でも色彩が残っています。
天然の鉱物を砕いて粉にした天然岩絵の具は、艶のない深みのある色が美しく、古代から壁画や絵画などに利用されている画材です。
秋田大学で所蔵している絵巻「阿仁鉱山 銅山働方之図(あにこうざん どうざんはたらきかたのず)」では約150年前に作成されたにもかかわらず、未だに美しく発色しています。
使われている色の元になった鉱物を見てみましょう。
写真の鉱物はすべて鉱業博物館に展示しているものです。
「群青」と呼ばれる青い部分は「藍銅鉱(らんどうこう)」という鉱物を使っています。
日本でも古くから使われ、尾形光琳(おがたこうりん)が描いた国宝「燕子花図(かきつばた ず)」では燕子花の花の色にも使われています。
「緑青」と呼ばれる緑の部分は「孔雀石(くじゃくいし)」という鉱物を使っています。
こちらも古くから使われ、植物の葉など緑を描く際に使われています。
「辰砂」と呼ばれる赤は、その名のとおり「辰砂(しんしゃ)」という鉱物が使われています。
鮮やかな赤を表現しますが、毒性を持つため取扱いには注意が必要です。
「方解末」と呼ばれる白を表現するには「大理石(だいりせき)」が主に使われています。
肌色を表現するときは、この大理石に「鉛丹(えんたん)」や「赤鉄鉱(せきてっこう)」を混ぜて使います。
他にも、様々な鉱物が顔料の原料として使われています。
それでは実際に岩絵の具を作ってみましょう。
1.藍銅鉱、2.赤鉄鉱(ヘマタイトとも呼ばれます)、3.孔雀石、4.青金石(ラピスラズリとも呼ばれます)
これらの鉱物は色が鮮やかで人気もあるため、天然石・アクセサリー販売店等で比較的安価で手に入ります。藍銅鉱と青金石は青色、孔雀石は緑色、赤鉄鉱はレンガ色になります。
石の塊をある程度の大きさに砕くときに使います。
ステンレス乳鉢で砕いた後、めのう乳鉢を用いて粉状にします。
粉末にした岩絵の具を、紙などに描く際に使います。画材屋等で販売しています
絵を描くときに使うものです。パレット、筆、画用紙や葉書など。
飛び跳ねた石のかけらから目を守ったり、砕いた粉末を吸い込まないようにするため着用します。
余った岩石粉を保管するときに使います。
ステンレス乳鉢に鉱石を入れ出来るだけ細かく砕きます。
めのう乳鉢に移し替え、さらに細かく磨りつぶしていきます。目標は小麦粉くらいの手触り。
磨りつぶした鉱物粉を種類ごとに小皿に移し、必要な分だけパレットに取ります。
膠(にかわ)液をパレットに取り、それを水で2~3倍に薄めて鉱物粉と混ぜ合わせます。
絵を描きます。筆を滑らせるようにではなく、色を置くような感じで描いていきます。
余った鉱物粉は、薬包紙につつんで保存できます。
鉱業博物館企画展「鑛のきらめき」ワークショップ「石から絵具を作ってみよう!」の様子
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