2023年1月20日
東北地区
秋田大学大学院理工学研究科
数理・電気電子情報学専攻 電気電子工学コース
教授 熊谷 誠治
二酸化炭素の排出を減らすためには、再生可能エネルギーの積極的な導入が必要です。秋田県沿岸部は風力発電に適した条件を有しており、今後10年程度で大規模な洋上風力発電所が設置されます。日本は2050年にカーボンニュートラル(実質的な二酸化炭素排出ゼロ)を目指しています。風力発電だけでなく、太陽光発電も今後さらに導入されていきます。
みなさんが使っている電気は、発電する量と消費する量が等しくなるように制御されています。そうしないと、電気の周波数や電圧が一定にならないためです。再エネは天候の影響が大きいため、その発電量の変動は火力発電で調整されています。しかし、カーボンニュートラルの実現のためには、火力発電所を減らす必要があります。その際、電気の出し入れが得意で、短い時間での需要変動にも対応できる蓄電池が重要な役割を果たします。
スマートフォンや自動車で使用されている蓄電池と比較して、より規模が大きく、高性能で寿命が長く、さらに安価な蓄電池が必要になります。さらに、蓄電池をどのように使えば高い効果が得られるかを考える必要もあります。そのような背景から、本研究室では以下の研究を行っています。
電池に使用される材料や構造を改良して、現在の製品より、多くの電気を貯蔵でき、寿命も長くなるような技術を開発します。また、大量の再生可能エネルギーが電力系統に接続されても、その系統が安定に運用される蓄電池の導入および制御方法についても研究しています。
電池には正極と負極があります。リチウムイオン電池の負極には主に黒鉛が使われています。黒鉛の代わりになる新しい材料が何かないかと考えたのが本研究の発端です。
秋田県は米どころゆえに、毎年たくさんの「もみ殻」が排出されます。調べてみると、その3分の1にリサイクル用途がありませんでした。そこで、もみ殻を炭にして、リチウムイオン電池の負極に使う研究を始めました。炭にする工程を工夫することで、優れた性能を示す負極材料の開発に成功し、特許を取得しました。地域の有機資源をうまく活用して、再生可能エネルギーのさらなる導入に役立てていきます。
近い将来、電気自動車が増えると、廃車になった電気自動車から膨大な量の廃リチウムイオン電池が発生します。リチウムイオン電池の正極材料には、コバルトなどの希少な金属が使用されています。コバルトは価格が高い上、生産国も限られているので、将来は手に入りにくくなるでしょう。そこで、廃電池から正極材料をリサイクルする研究を進めています。正極材料を上手にリサイクルできれば、安価に、持続的に電池を製造できます。
上記の研究を通して、SDGs「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の達成に貢献していきます。
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