電磁波を用いることにより、人間の目では見ることのできない土の中、コンクリートの中、人体の中などを見ることができます。例えば、地中に埋め込まれた水道管、コンクリート中の鉄筋などの可視化装置は既に実用化されています。このような装置は電磁波レーダと呼ばれます。長崎大学ではマイクロ波帯(周波数3GHz-30GHz)の電波を利用した電磁波レーダの研究を進めています。
図1は電磁波レーダの原理を示したものです。アンテナから放射された電波は物体にあたると、一部は透過し(物体が金属の場合、透過はありません)、一部は反射します。この反射波を受信し、信号処理を行うことにより物体の大きさや、その物体が何であるかがわかります。この原理を用いて、現在研究開発を進めている2つの電磁波レーダについて紹介します。
図1
図2はコンクリート内部の鉄筋およびひび割れ検出の実験例です。鉄筋だけ検出できるレーダは既にありますが、鉄筋に隠れたひび割れまで検出できるレーダは研究例がありません。高速道路や橋梁では、多くの大型車両が通過するとその加重により鉄筋のすぐ下に水平ひび割れが生じます。水平ひび割れは目視で確認できないため,アスファルトをはがしてコンクリートを一部破壊して保守・点検しなければなりません。図2の実験結果から2.5ns付近に鉄筋からの反射波が観測され、位置=200mm-600mmの間に、水平ひび割れからの反射波が確認できます。実験結果は正確に水平ひび割れの位置を検出しています。
図2
図3は電波型内視鏡の実験結果です。内視鏡手術では内臓脂肪を剥がす必要がありますが、内臓脂肪に隠れた血管の位置が分からないと術中に血管を傷つける危険性があります。そのため、脂肪に隠れた血管を検出できる電波型内視鏡を研究しています。図3の結果から0.63ns付近に血管からの反射波が観測できます。血管の大きさは直径4mmであり、血管の大きさ、位置を検出しています。
現在、これらのレーダについて検出精度を上げるための研究を進めています。
図3
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