トップページ > なんでも探検隊 > 革新的なダイヤモンド加工技術の開発

なんでも探検隊

革新的なダイヤモンド加工技術の開発

2023年10月20日
金沢大学 理工学域
電子情報通信学類 電気電子コース 薄膜電子工学研究室

 ダイヤモンドが硬いということは、知っているかと思います。では、そのダイヤモンドはどうやって加工されるのでしょうか?

 今は、同じダイヤモンドの粒子でゴリゴリ削ったり、レーザで局所的にグラファイト化や酸化させて除去したり、アルゴンなどのイオンをぶつけて削ったりしています。実際に、宝飾用途として、ブリリアントカットなど、とても細かく面を出して研磨する職人さんもいます。しかし、これらの手法はけっして簡単な方法ではありません。高度な技術または高価な装置が必要です。

 もっと安く、簡単に加工する方法はないのでしょうか?実は、その技術の種がここにあります。ニッケルを始めとする鉄系の金属には、炭素が溶けることが知られています。我々の研究室では、その特徴に着目し、研究テーマの一つとして、ダイヤモンドの加工技術の開発を行っています。ニッケルに炭素が溶ける量は温度で決まっており、最大でも3%以下という微量しか溶かすことができません。たくさん加工するためには、ニッケルからの炭素の排出機構が重要になります。そこで注目したのが、酸化です。ニッケルを酸化させて、還元という形で炭素の排出を試みました。ただし、酸素を使うとダイヤモンドそのものも酸化してガス化するため、加工には使えません。ソフトな酸化として、水蒸気がニッケルだけを酸化することを見出しました。その結果、ダイヤモンドの加工に成功しました。おもしろいことに、酸化の条件を適切に制御すると、ダイヤモンド中で規則正しく並んだ原子のある方向にのみ、炭素が溶ける速度を遅くでき、加工の停止面として使えることも分かりました。この停止面を使うと、動画のように、変化が始まってから、わずか10分程度でダイヤモンド表面に逆ピラミッド構造の穴を作ることができました。

 今後、本技術は、ダイヤモンドに貫通穴を開けたり、表面を平坦にしたり、スライスしたり、革新的な加工技術として高度化されていきます。電子情報通信学類電気電子コースの薄膜電子工学研究室兼ナノマテリアル研究所では、この技術を利用して、ダイヤモンドを安く製造したり、ダイヤモンド半導体デバイスを作製したり、ダイヤモンドエレクトロニクス創成に向けた研究を行っています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2014-10-21

生レポート!卒業生の声

なんでも自分でやってみる面白さ

埼玉大学工学部

2019-02-08

生レポート!現役学生の声

主体性を大切に

広島大学工学部

2021-09-10

輝く工学女子!(Tech ☆ Style)

分子のきもちのほんとのひみつ

弘前大学理工学部

2020-11-20

工学ホットニュース

エネルギーの有効利用「ヒートポンプ技術」

静岡大学工学部

2021-01-08

生レポート!大学教授の声

学際的な学びのススメ~プラズマ医療の研究は工学?それとも医学?~

愛媛大学工学部

2023-12-15

なんでも探検隊

マイクロ波を用いた探査レーダ

長崎大学工学部

金沢大学
理工学域

  • 数物科学類
  • 物質化学類
  • 機械工学類
  • フロンティア工学類
  • 電子情報通信学類
  • 地球社会基盤学類
  • 生命理工学類

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。