ダイヤモンドが硬いということは、知っているかと思います。では、そのダイヤモンドはどうやって加工されるのでしょうか?
今は、同じダイヤモンドの粒子でゴリゴリ削ったり、レーザで局所的にグラファイト化や酸化させて除去したり、アルゴンなどのイオンをぶつけて削ったりしています。実際に、宝飾用途として、ブリリアントカットなど、とても細かく面を出して研磨する職人さんもいます。しかし、これらの手法はけっして簡単な方法ではありません。高度な技術または高価な装置が必要です。
もっと安く、簡単に加工する方法はないのでしょうか?実は、その技術の種がここにあります。ニッケルを始めとする鉄系の金属には、炭素が溶けることが知られています。我々の研究室では、その特徴に着目し、研究テーマの一つとして、ダイヤモンドの加工技術の開発を行っています。ニッケルに炭素が溶ける量は温度で決まっており、最大でも3%以下という微量しか溶かすことができません。たくさん加工するためには、ニッケルからの炭素の排出機構が重要になります。そこで注目したのが、酸化です。ニッケルを酸化させて、還元という形で炭素の排出を試みました。ただし、酸素を使うとダイヤモンドそのものも酸化してガス化するため、加工には使えません。ソフトな酸化として、水蒸気がニッケルだけを酸化することを見出しました。その結果、ダイヤモンドの加工に成功しました。おもしろいことに、酸化の条件を適切に制御すると、ダイヤモンド中で規則正しく並んだ原子のある方向にのみ、炭素が溶ける速度を遅くでき、加工の停止面として使えることも分かりました。この停止面を使うと、動画のように、変化が始まってから、わずか10分程度でダイヤモンド表面に逆ピラミッド構造の穴を作ることができました。
今後、本技術は、ダイヤモンドに貫通穴を開けたり、表面を平坦にしたり、スライスしたり、革新的な加工技術として高度化されていきます。電子情報通信学類電気電子コースの薄膜電子工学研究室兼ナノマテリアル研究所では、この技術を利用して、ダイヤモンドを安く製造したり、ダイヤモンド半導体デバイスを作製したり、ダイヤモンドエレクトロニクス創成に向けた研究を行っています。
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