私たちの身の回りにはスマートフォンやタブレット搭載のカメラ、ビデオカメラ、ドライブレコーダー、監視カメラなど多くのカメラが存在しています。記念写真などの記録だけでなく、ロボットや自動運転など様々な場所で利用されています。これらのカメラ(フレームカメラ)は、レンズからセンサに入ってくる光を輝度値に変換して1枚の画像(フレーム画像)として出力します。画像は多数の小さな画素の集まりです。デジタルカメラで撮影した写真を大きく拡大すると、小さな四角が見えますが、これが画素です。ビデオカメラでは、一度の撮影だけでなく、連続して撮影することで動画像を出力します。
一方、近年、生物の網膜から着想を得て生み出されたビジョンセンサ「イベントカメラ」が注目を集めています。イベントカメラは輝度の変化を検知して出力し、各画素における輝度の変化をイベントとして捉え、その情報(座標、極性、時間)を画素ごとに独立して非同期で出力します。フレームという概念がありません。そのため、高時間分解能、低消費電力の特長があります。風船などの物体が破裂する瞬間やスポーツ選手の早い動きを記録した映像を見たことがあると思いますが、これらはハイスピードカメラで撮影されています。ハイスピードカメラは高時間分解能のフレームカメラです。イベントカメラはハイスピードカメラと同等あるいはそれ以上の高時間分解能をもちます。またハイスピードカメラに比べると安価な利点もあります。
ここでは実際にフレームカメラとイベントカメラで撮影した画像を紹介します。図1は人物の顔が左右に動いているシーン、図2はジャグリングのシーン、図3は駐車場でバスが移動しているシーンです。それぞれのa図はフレームカメラ、b図はイベントカメラで撮影した画像です。フレームカメラから実際の状況がわかりやすく確認できます。一方、イベントカメラはイベントしか検知しませんので、動いている物体しか見えません。イベントカメラの画像は普段の生活では見慣れないので、何が映っているのか判別しにくいかもしれませんね。
イベントカメラを利用した研究開発は大学や企業などでも少しずつ増えています。九州工業大学情報工学部齊藤剛史研究室でも、イベントカメラを利用した画像処理に取り組んでいます。フレームカメラでは難しい課題の解決を目指し、日々研究を進めています。
掲載大学 学部 |
九州工業大学 情報工学部 | 九州工業大学 情報工学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |