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エネルギーをギュッと圧縮すると…パルスパワーの魅力

 
2014年3月11日
熊本大学 パルスパワー科学研究所

パルスパワーとは…エネルギーを時間的にギュッと圧縮して得られる大きな力のことです。これ、実は皆さんの身の周りに例がたくさんあります。金槌で釘を柱に打ち込むときの一連の動作が正にぴったりです。振り下ろすことで金槌にゆっくりとためられた運動エネルギーが釘頭にあたる一瞬のうちに釘先の大きい圧力に変わり、その結果、釘は木の繊維を引き裂きながら奥へと入っていきます。この例の、ゆっくりとためたエネルギーを一気に大きい力に変えて使うというのがパルスパワーのミソです。電気エネルギーの典型的な例は雷や静電気放電です。化学エネルギーとしては爆発がわかりやすいでしょう。時間スケールは違いますが、地震もパルスパワーといえるでしょう。このように、エネルギーを時間的に、場合によっては空間的に圧縮して、他の方法では出せないとても大きな作用力として利用する、これがパルスパワーです。作用力はとても大きいですが、時間がとても短いので(1千万分の1秒以下)、使うエネルギーはあまり大きくありません。作用の対象は、固体、液体、気体、何でもありで、これらの中で究極の極限状態(超高圧、超重力、超非平衡など)を発生し、対象に作用させます。下の写真は、さまざまな対象へのパルスパワーの適用例です。

パルスパワーの適用例

熊本大学は、パルスパワー科学研究所を中心としてパルスパワーに特化した基礎および産業応用研究を推進し、この分野で世界をリードしています。私たちの研究によって、これまでに、他の方法では実現できない新しい物理現象やダイヤモンドより硬い物質などが見つかっています。また、パルスパワーは、新しい金属接合や物質合成・分解法、大気や水を含めた新しい環境浄化法など、次世代の産業技術としても期待されています。さらに最近は生物への応用が注目を浴びています。パルスパワーは生物にとって刺激(ストレス)になりますので、うまく調整すると細胞を元気にしたり、逆に死に導いたり、といったことが可能です。そのときの細胞応答を司る細胞内の分子反応メカニズムもわかりつつあります。このことを利用して、がん治療などの医療応用、鮮度維持・抽出などの食品応用、発芽・成長促進などの農業応用の研究が進められています。最後に、パルスパワーの最大の魅力は、電気、化学、機械といった理工学にとどまらず、農学や薬・医学といった複数の分野にまたがった新しい学問領域であることかもしれません。

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