皆さんはこれまでに学校で色々な理屈を学んできたものと思います。このホームページを見る学生さんは、来るべき受験に備えて勉学に勤しんでいるのではないでしょうか。そんな皆さんに例えば「10÷3は?」と問いかけてみると、きっと「10/3」とか「3余り1」なんて答えが返ってくるでしょう。3.333といった数値はテストの答えとしては書きづらいですね。厳密には小数点以下の3は無限に続くわけですから、間違いにされてしまうのではないかと不安になってしまいます。
学校の勉強に限らず、理系の職種だとこういった解の厳密さはとても重要視されてきました。でも、流行のAIなんかだと3.3や下手をすれば3という答えが返ってくるかもしれません。こういった「いい加減」なところが最近の情報科学の発展のキーになっています。これまでは3.33333と3が沢山ある答えが返ってきたところを、なんとなく3くらいだろうなという見積もりをコンピュータが返してくれるようになりました。これは大変な進歩です。
私の専門は金属の変形と破壊のコンピュータシミュレーションです。特に、逆解析と呼ばれる変形・破壊してしまったものから元の形状を復元することに取り組んでいます。この問題を解こうと思っても、厳密に解けないことはもう証明されています。一見不可能な解析でしたが、最近になってそれらしい偽物の逆解析結果をAIで作ることはできてしまいました。人によっては、こんなズルな計算は捏造だと怒ってしまうかもしれません。しかし、厳密な解にこだわるあまりに検討が進まなくなってしまうケースもあるのです。
大学生や社会人は答えがないものに答えを出すことが求められます。テストのような答え合わせができない事象に対しては、余り細かなところで厳密な解にこだわらないことが答えを出す近道になることもあります。もちろん、答えを出す対象によります。この記事を読まれた皆さんが早く大学生になって、良い加減ないい加減さを(できれば鳥取大学で)身につけてくれることを期待しています。
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