博士号取得のためにアメリカに留学して2年ほど経ったある日、私が実験で苦戦していたところに一学年上の大学院生がやってきて、短時間のうちに問題を解決してくれました。その時に彼が私に言ったのは、「あなたと僕とで違うところは、これが必ずできるはずのことだと思ってやっているかどうかだ」ということでした。つまり、できるはずだと思って取り組むのと、できないかもしれないと思いながらやるのとでは結果が変わる、ということでした。その後、博士号を取るまでには何度も困難に直面しましたが、その都度、きっとできるはず、なんとかなるはず、と自分に言い聞かせてそれらを一つずつ乗り越えました。そして、その結果として身に着いた、あまり根拠がなくても「きっとなんとかなる」と思えるメンタリティーは、その後の人生の中で大小様々な試練を乗り越える際に大いに役立っています。また、理工系の女性研究者自体が少なく、子育て経験のある女性研究者はさらに少ない中で、3人の子どもを産んで育ててみようと思ったのも、そのようなメンタリティーのなせる業かもしれません。
工学部は、未来の社会を形づくる、まだ見ぬ新しいモノを創り出す学部です。新しいモノを創り出そうとするときに、最初から上手く行くことはほとんどありません。試行錯誤の末にようやく満足の行くものができれば良い方で、当初の目論見が全く外れてしまうケースも少なくありません。そのような時に、他にうまく行く方法があるはず、なんとかなるはず、と思って踏ん張れば、不思議と何らかの打開策が見つかるように感じます。工学部で学ぶ中では、難しい局面にぶつかっても、自らの頭と手を動かすことで、少しずつでも着実に前に進むことができるという経験を数多く積むことができます。そのような経験を通じて「なんとかなる」と思えるメンタリティーを獲得できれば、「なんとかする」力も自ずとついてくると私は考えています。
不確定要素の多い現代社会を生きていく中で、「最終的にはなんとかなる」と思えるかどうかが、新しいことにチャレンジしたり、あきらめずに最後までやり遂げたりできるかどうかを左右するのではないでしょうか。チャレンジしたり、最後までやり遂げたりすれば、新たなチャンスが巡って来ます。そのようなチャンスを掴むためにも、まずは、「なんとかなる」と自分に言い聞かせてみませんか。きっとなんとかなると思いますから。
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