最近、人工知能(Artificial Intelligence, AI)という言葉をよく耳にするようになりました。特にChatGPTを始めとした生成系AIが注目を集めています。このようなAIは、問い掛けに対して人間と変わらないような言葉で返答したり、入力された文章からそれに合った画像を生成したりするなど、これまで考えられなかったような高度な知的振舞いを見せています。すでに多くの方がこれらの技術の利用を試みられていると思います。
私自身、AIの研究を30年以上続けてきましたが、このようなシステムが実現したことは、研究者として大変嬉しく思います。ただ、その実現に直接的に関与できなかったことに少し残念な気持ちもあります。実際、多くのAI研究者たちは、「こんなことができたらいいな」と夢見ていたことが実現してしまい、少なからず焦りを感じているのではないでしょうか。ただし、技術が開発されれば、それをさらに発展させようというのが研究者の性(さが)です。私の研究室でも、これまでAI技術を活用して社会に役立つシステムやサービスの研究を進めてきましたが、現在は生成系AIを活用する方針にシフトしています。
ChatGPTなどの生成系AIは「大規模言語モデル」というカテゴリに属しています。人間が日常で使う言語を「自然言語」と言い、それをコンピュータが扱えるようにしたものが「言語モデル」です。ただし、注意が必要なのは、言語モデルであっても、それが出力する内容が常に正しいわけではないという点です。ChatGPTはインターネット上の文章を学習素材としているため、正しい内容を出力することもありますが、いつも正しいわけではなく、時にはまったくのでたらめをもっともらしく出力することもあります。これからの時代、生成系AIを利用して仕事を進めたり、生活を便利にすることが求められるでしょう。しかし、その特性を理解せずに利用すると、誤った情報に基づく行動を取ってしまうリスクがあります。生成系AIの特性を知るためには、単に利用者として使うだけではなく、その原理を学ぶことが必要です。原理を理解していれば、誤った使い方を避け、より適切な応用を考えることができるでしょう。
私は、ぜひ大学の工学系の学部に入りAIについて学んでほしいと願っています。それによって、より深い理解と適切な活用が可能になるでしょう。最新のAI技術の進化は、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。その変化を理解し、賢く活用することがこれからの時代を生き抜く鍵になるはずです。
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