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生レポート!大学教授の声

人工知能の勧め

2016年9月8日
神戸大学 大学院システム情報学研究科
上原 邦昭
生レポート!大学教授の声

1946年にコンピュータが発明されてほんの10年後、いずれコンピュータが人の代わりをするようになるに違いないという考えが研究者の中に芽生えてきました。これが人工知能という研究の始まりです。しかし、20年もしないうちに、当時のコンピュータの能力的限界と問題の難しさにより、研究のブームは去って行きました。私が人工知能の研究に興味を持ったのは、2回目のブームと言われる1980年代です。その当時、私は大学院生になったばかりでした。指導教授からはある種の基礎理論を拡張せよというテーマを与えられていましたが、定理・証明の繰り返しで、どうしても頭の中にイメージがわかず、思い余ってテーマの変更を願い出ました。

その後、私はコンピュータを使って人間と対話できるシステムを作りたいと考えて、一人で人工知能の研究を始めました。当時は、人間の知識をうまくコンピュータに取り込むことさえできれば、対話システムは完成できると考えられていました。しかしながら、研究が進むにつれて、人間の赤ちゃんが言葉を学ぶのと同じように、コンピュータが知識を学ぶような仕組みが必要という考え方が生まれてきました。これが機械学習という研究です。私は対話システムの研究に行き詰まりを感じ、機械学習へとテーマを移行しました。その当時、日本には師と仰ぐ人がおらず、1年間アメリカに留学しました。しかし、この頃には2回目のブームが去って行きました。

ところが、2010年以降になって、人間の脳をモデル化したニューラルネットワークの研究(深層学習)が、3回目のブームを引き起こしました。機械学習と深層学習はどこに違いがあるのでしょうか?機械学習では、現実世界の「何に注目」して学習すべきかを予め人間が決めていたのに対し、深層学習では、コンピュータがデータをもとにして自ら決めるようになりました。この結果、人間よりも精度よく顔や写真を見分けられるようになり、携帯電話に問いかければ女性の声で返答してくれるようになりました。あと数年もすれば、車の自動運転もできるようになるでしょう。

君たちが人工知能に興味を持ち、一生懸命に研究すれば、この先どのような世界が生まれるのでしょうか?もちろん、人工知能の成果が我々の生活に取り入れられるにつれ、事故が起こった際の法律をどのように制定するか、倫理や社会制度をどのように適合させるか、人工知能の爆発的発展によるシンギュラリティにどのように対処するかなど、解決すべき困難さも山積みとなることでしょう。それでもなお、私は高校生諸君を人工知能の研究に誘いたい。ちょうど私が大学院1年生の時に、それまでの(自分にとって)無味乾燥な研究を捨て、人工知能の研究に飛びついた時のように、夢あふれる研究生活を過ごしてもらいたいと希望しています。

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