皆さんが毎日使っている水道水は見た目が透明できれいですね。ご承知のとおり水道水は浄水場で作られます。河川や貯水池の水道原水は濁っているのですが、それを浄水場では、薬品で大きな塊にして沈めたり、ろ過で取り除く処理をしています。もしそれらの水道原水に色がついていたらどうでしょう。色の成分は水に溶けていますので、塊にしたりろ過で取り除くことは困難です。(食塩水をろ過しても食塩は除けないのと同じですね)
このように溶けている成分を除去する方法は水処理の中でもかなり難しい部類なのです。ここでは溶解成分の除去方法として活性炭を使った処理(活性炭吸着法)を試してみましょう。この方法は実際に浄水場でも臭気物質や微量化学物質を除去する際に使われることもある方法です。今回の実験では、水に着色成分を溶かして着色水を作り、脱色されれば溶解成分が除去されたことが目で見て確認できます。
濃度は一例です。色がついていることが明確な濃度として紹介しています。
例えば、以下のURLで購入できるもの
https://www.monotaro.com/g/03398559/?t.q=%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%BA%E6%B4%BB%E6%80%A7%E7%82%AD
もしくは市販の脱臭剤から中の活性炭を取り出しても代用できます。
300mLぐらいのもの
10mLぐらいのもの
撹拌子とスターラー(なければ割りばしなどで手回しで代用可能)
コーヒーフィルターなど
吸光スペクトルを測定できる分光光度計
着色水を200~250mLほど透明の容器に入れる。
用意した活性炭を0.5gもしくは1.0gはかり取り、着色水に投入し、活性炭が着色水内で均一になるように撹拌する。
5分もしくは10分毎に撹拌を止めて、上澄みを取り出しろ紙でろ過する(残っている活性炭を取り除く)
並べて脱色されている様子を比べてみる
活性炭はヤシ殻などを焼いて出来た炭の粉や粒のことです。これには微細な穴(微細孔:直径1~20nm)が無数に存在しています.それらの穴には水に溶けている物質が吸着しやすい構造となっています。(下図参照)。
活性炭が物質をどの位吸着するのかは、吸着する箇所、すなわち穴の内壁面積に依存します。一般的には粒の内部まで穴が無数にあるので、1gあたり500~1,500m2(テニスコート2~6面分)以上の表面積をもつといわれていて、高い吸着能力を示します。
また活性炭に吸着されやすい物質もあれば、されにくい物質もあります。一般的には水に溶けやすい物質(親水性物質)は吸着されにくく、溶けにくい物質(疎水性物質)は吸着されやすい傾向にあります。
今回の実験結果からメチレンブルーの方がカルミン酸よりも吸着されやすいことがわかりました。親水性物質か疎水性物質かを示す指標として水―オクタノール分配係数がありますが、この指標からカルミン酸はメチレンブルーより親水性が1,000~10,000倍ほど高く、活性炭に吸着して除去され難いことがわかります。
さて、そもそもなぜメチレンブルー溶液が青色に、カルミン酸溶液が赤色に見えるのでしょう。下図は吸光スペクトルというもので、波長ごとの吸光度を測定し、つないで表示したものです。吸光度は光の吸収度合いを示す指標ですが、値が1違うと光の通り難さは10倍違います。この吸光スペクトルを見ると、どの波長(つまりどの色)を吸収して、どの波長(色)を通過させやすいのか、がわかります。
メチレンブルー溶液の吸光スペクトルでは600~700nm付近に吸光のピークがあります。つまり橙~赤色を吸収することを示しています。逆に青色~水色の付近の吸光は少なく、この色は溶液を通過しやすいことを示しています。つまり青色付近の光が優先的にこの溶液を通過して見えることから、この溶液は青色に見えるわけです。
一方、カルミン酸溶液の吸光スペクトルを見てみると、400~600nm付近(紫~黄色)に吸光のピークがあり、橙~赤色では吸光がなく、この色の光がとおりやすいことがわかると思います。つまりカルミン酸溶液は赤色に見えるわけです。
おまけで、三ツ矢サイダーの吸光スペクトルを示してみました。
可視光域では吸光がないことがわかります。これは、色として見える全ての波長の光が吸収されずに溶液を通過できる、つまり透明な溶液ということを示しているわけです。
でも目には見えませんが、紫外域では吸光されていることがわかります。この溶液は甘味料が入っており、この物質が紫外域で吸光していることがわかります。
つまり脱色処理とは、可視光域の吸光を無くす、ということができれば達成できることになります。
メチレンブルー溶液を活性炭で処理した場合のスペクトル変化を示します。
時間とともに可視光域の吸光が減って、20分ではほぼ吸光がなくなっています。つまり透明に近くなったということがわかります。
ちなみにメチレンブルー溶液の脱色方法としてオゾン気体を吹き込むという方法もあります。オゾンは酸化力の強いガスで、様々な物質を酸化させる能力を持っています。酸化反応とは物質から電子を奪い取ることを意味しますが、電子を奪われた物質はそのままでは安定した構造を保てずに、別の形へと変化します。これが酸化分解です。
下にメチレンブルー溶液にオゾン気体を吹き込んだ時のスペクトル変化を示します。可視光域を見れば、活性炭の時と同じように吸光度が減っていて透明になっていることがわかります。ただし紫外域では活性炭の時とは違って、吸光度が増えているところもあります。これはオゾンの酸化分解によってメチレンブルーが化学変化し、紫外域の200nm付近では吸光する物質へと変化し、透明になった後も残存していることを示しています。
このように脱色処理といっても、単に可視光域の吸光度を下げる方法なのか、物質自体を吸光して水中から除去してしまう方法なのか、その処理原理は吸光スペクトルの変化で確認することができるわけです。
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