近年、Mola Structural Kit(1)のような知育玩具型教材が市場に登場し、土木工学や建築学に関わる地上構造物への興味喚起や、多様な構造システムの理解促進に期待が寄せられています。しかし、この教材は高価で、必要な部品をすべて揃えるのは容易ではありません。
一方、安価なFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタが普及し、使いやすさも向上しています。この技術革新により、独自の教材を容易に製作できるようになりました。3Dプリンタを活用した教材製作の利点は下のとおりです。
この方法は、従来の高価な教材に代わる、効果的かつ経済的な選択肢となっています。以下、建築骨組の模型製作の過程と模型用部品の活用を紹介します。
(1)https://molamodel.com/(2024.12.19access)
CADソフトウェアで部品を設計する。
設計図データをSTLファイル形式に変換し、これを3Dプリンタに出力する。(出力方法は使用者のソフトウェアや3Dプリンタのマニュアルを参照してください。)
ワンタッチで接合できるよう、ボルトの使用を極力避け、引張を受けても部品同士が離れないように鈎と引掛穴を設置する。この接合形状はすべての部品の先端部に採用されています。この接合形状は、組立作業の効率化と構造の安定性確保との両立を可能にしています。
教材としての骨組模型は、主に部材・接合部・支承部で構成されています。これらは想定される骨組形状に基づいて設計されています。さらに、学習目的に応じて、新たな構成品設計造形することも可能です。なお、部品間のボルト接合のときは、ネジを使用します。
異なる支承部の選択に応じた2種類の骨組を組立て、横方向の力を加えて変位量を比較する実験を行いました。実験結果は構造力学の理論に基づく計算結果とおおむね一致しています。変形の視覚的観察だけでなく、構造力学の理解を深めるための教材としても有用であることが確認できます。
先述の部品を可動トラス(動く骨組)の模型に組み立てて、形状変化のシミュレーション、形状変化時のリスク評価(部材同士の干渉の有無)や効果的な固定方法を実践的に検証できます。この手法により、コンピュータシミュレーションだけでは気づきにくい実践的な課題や改善点を早い段階で発見することができます。
今回取り上げた内容だけでなく、吊橋、ドームの模型製作に適用できます。
3Dプリンタによる教材の活用は、工学的理論と実践を結びつけ、低コストで高い教育効果が得られ、学生の創造性と理解力を促進させます。そして、従来の市販教材に比べて、効果的かつ経済的な学習アプローチを提供することが期待できます。
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