最近では様々なイベントで欠かせない演出となっているプロジェクションマッピングでは、映像が大きな建物などにずれることなく投影され、色鮮やかに色彩が変化しますが、このような投影はどのようにして行っているのでしょうか?この実験では身の回りにある物を使った簡単なプロジェクションマッピングを行い、投影や色彩などの光学の基礎を学びます。
厚手のマット紙に印刷された投影する対象を切り抜いて模型を作ります。このとき、対象の下の部分を長めに切り取り、L字型に折り曲げて模型を直立させます。
色画用紙などで背景をつくれば模型は完成です。
模型に投影する図案を考えて、以下のようなスライドを作成します。
縮小印刷した投影する対象の大きさに合わせてボール紙を切り抜いてフィルムの枠を作り、枠に透明フィルムをセロファンテープで貼り付けます。その後、縮小印刷の上に置いて、投影する図案をフィルムに油性マジックで描きます。
スライドが直立できるように脚をつけます。模型の前に投影スライドとLED懐中電灯を置いて映像が重なるようにスライドと懐中電灯の位置を調整すれば完成です。
投影スライドの図案を工夫して面白い演出をしてみてください。
改造したLED懐中電灯ではLEDの1点から放射状に光線が照射され、投影スライドを透過して模型上に光が投影されます。このような投影を透視投影といいます。
LED懐中電灯から模型までの距離をa、投影スライドまでの距離をbとすると、b/aは投影する対象の縮小印刷の比率になっている必要があります。この関係は模型と投影スライドの到るところで成り立っている必要がありますから、投影スライドと模型は平行に並んでいることになります。
これらの関係が成り立っていれば投影スライドとLED懐中電灯は自由に配置することができ、模型の左右から斜めに投影することもできます。また、これらの関係を考えて描画形状を調整すれば、凹凸のある模型にもずれることなく映像を重ねることができます。よく見かけるプロジェクションマッピングでは、コンピュータグラフィックスでビデオ画像を作成した後に、投影対象の3Dモデルを用いてコンピュータで投影画像の透視投影変換をしています。
LEDの発光源は非常に小さく放射状に光を放出します。このような光源を点光源といいます。
懐中電灯では効率的に前面に光を照射するために、後方や側方に広がった光線を反射鏡で前方に反射させます。前方に照射される光量は多くなりますが、照射される光線の向きは放射状になりませんので、懐中電灯の前に投影スライドを置くと、投影される映像がボケてしまいます。多数のLEDを使用した懐中電灯ではこのような照射がずれて重なりますので、やはり放射状はなりません。
この実験では上記の理由から 1灯式のLED懐中電灯を用い、反射板に黒画用紙を貼り付けています。これによって点光源を作り、シャープな映像の投影を実現しています。
カラー印刷は、C(シアン、水色)、M(マゼンタ、紫色)、Y(イエロー、黄色)とK(黒)のインクを混ぜ合わせて様々な色を作り出しています。R,G,B(赤、緑、青)の成分が含まれる白色の光をこれらに照射すると、Cの印刷ではRが吸収されます。R以外のGとBは反射され、これらが混ざることでCの色に見えます。同様に、MではRとB、YではRとGを反射し、MとYに見えます。
CMYのうち二つの色が重ねて塗られていると、それらの二つの色で共通して反射される光のみが反射されます。例えば、CとMを重ねて塗るとBの色に見えます。
このように色を重ねることで反射する成分が減る性質を利用して色をつくることを減法混色といいます。このモデルの説明では、3つ重ねると照射されるRGB成分がすべて吸収されますので黒になりますが、実際には様々な波長の光があって、CMYの塗料だけでは吸収できない成分もあります。そのため、カラー印刷ではCMYに加えてすべての波長の光を吸収するKも用いています。
LED懐中電灯からはRGBのすべての成分を含む白色の光が照射され、透明フィルムに塗られた油性マジックによって成分が失われ、有彩色の光になります。その光が模型に照射されると、模型の色彩によってさらに光の成分が失われて最終的に残った成分の色彩に見えます。
この関係を考えて図案の色彩を調整すれば、模型の見た目の色彩を置き換えたり、模様を変化させる光学イリュージョンを実現することもできます。
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