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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

お湯で動くエンジンづくりに挑戦してみよう

2018年2月20日
熊本大学 工学部 機械システム工学科 熱工学研究室
准教授 小糸 康志
技術専門職員 有吉 剛治

はじめに

実験1 メチレンブルー

 熱はエネルギーです。熱のエネルギーで、ものを動かすことができます。
ビーカーには、お湯(約100℃)が入っています。このお湯が持つ熱エネルギーで、ビーカーの上に置いてある装置(=スターリングエンジン)が動いています。ここでは、スターリングエンジンの製作に挑戦し、お湯で動かしてみましょう。

仕組み

 スターリングエンジンの下部は、図のような構造になっています。緑色の破線で囲んだパワーピストン部と、茶色の破線で囲んだディスプレーサー部で構成されており、ディスプレーサー部の下面がお湯で加熱され、上面は周囲の空気で冷却されます。

 ディスプレーサーは断熱材です。加熱と冷却が同時に行われている状態でディスプレーサーが上がると加熱の影響が大きくなり、内部の空気が膨張してパワーピストンが上がります(図(a))。逆に、ディスプレーサーが下がると冷却の影響が大きくなり、内部の空気が圧縮されてパワーピストンが下がります(図(b)) 。

 スターリングエンジンの全体図を示します。スターリングエンジンの上部でクランク機構を利用しています。ロッド①を介して、パワーピストンの上下運動をフライホイールの回転運動に変えています。同時に、ロッド②を介して、フライホイールの回転運動をディスプレーサーの上下運動に変えています。

 上記のように、パワーピストンとディスプレーサーの運動を連動させることによりスターリングエンジンが動くようになりますが、パワーピストンとディスプレーサーの上下運動には位相差を設ける必要があります。ディスプレーサーの位相がパワーピストンの位相よりも90°進んでいます。

設計・製作

スターリングエンジン下部

 ディスプレーサー部は、アクリルパイプ(外径:100mm、内径:90mm、長さ:45mm)を、2枚のアルミ円板(直径:120mm、厚さ:2mm)で挟んで製作しています。ディスプレーサーの動きを確認するために、透明のアクリルパイプを使用しています。十分な気密性を確保するために、アクリルパイプとアルミ円板の間にゴムパッキンを使用しています。また、ディスプレーサーは押出発泡ポリスチレンの断熱材で製作していますが、発砲スチロールでも構いません。

 図の破線で囲んだ部分には気密性と滑らかな動きが要求されます。ここでは、ガラス製の注射器を利用して製作しています。また、注射器(外筒)の固定部品をアルミ材で製作しています。

スターリングエンジン上部

 フライホイールは、アルミ円板(直径:100mm、厚さ:5mm)で製作しています。また、フライホイールの回転軸と支柱との摩擦を減らすため、ベアリングを使用しています。なお、フライホイールはパワーピストンとディスプレーサーの動きを安定させるために使用しています。

おわりに

 製作が少し難しいかも知れませんが、その分、完成したときの喜びも大きいと思います。パワーピストン部とディスプレーサー部の気密性を保ち、さらに、パワーピストン、ディスプレーサー、フライホイールを滑らかに動かすことが、スターリングエンジンを上手く完成させるためのポイントです。

 スターリングエンジンにはいくつかのタイプがあります。ここで紹介したものは、ディスプレーサー型スターリングエンジンと言われるものです。また、スターリングエンジンの原理は、スターリングサイクルというサイクル論で詳しく説明できますが、ここでは割愛します。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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